入学式でうつらうつらと船を漕いでしまったのは仕方ない。
校長や来賓のおじさん達の話は無駄に長いし、なんだかあの雰囲気は眠くなってしまうものだ。周りの子も何人か寝ていたし。
ツナも寝てるや、なんてたまたま見えた彼の様子に小さく笑ったのは良い思い出です。


そしてやっと終わった入学式。
担任を先頭に教室へと並んで進み、1−Aの教室に順番に入っていく。出席番号順に席に着いていけば、運良く私の席は教室の最後列だった。
これで窓際なら文句なしだったんだけど、残念。

担任の先生が自己紹介と、中学生活を送る上での説明や注意(風紀委員には逆らわないようにと念を押していた)をした後、今度は生徒達が自己紹介をするよう言われる。
ほとんどのメンバーが小学校から持ち上がりで、顔見知りなのにも関わらず、だ。まあそんなもんだよね。

出席番号順に男子から自己紹介をしていくのを、ぼんやりと肘をついた姿勢で眺める。
ツナと山本の時だけは真面目に聞いたけどね!あのツナのおどおど加減と山本の爽やかオーラには思わず笑みがこぼれた。2人とも可愛いなあもう!

男子が終わって、次は女子。
またもやぼんやりと眺めながら、どんなことを言えばいいのだろうかと考える。……やばい、何も浮かばない。
そうこうしている内に前の席の子の番が来てしまった。ちょっと恥ずかしそうに自分の名前と好きな教科、その他諸々を告げて、よろしくお願いしますと小さくおじぎをする。そうして席につくのを妙にひやひやした気持ちで眺めて、まばらな拍手が響く中、次私か……と一瞬静まった教室内に慌て気味に立ち上がった。
かたんと椅子と床がぶつかる。何を言うかは結局まだ浮かんでなくて、机に手をついたまま、口を開いた。

「……五十嵐、光です。えーと……牛乳が好きです。よろしくお願いします」

うっわ緊張してろくなこと言えてない!

顔を伏せたまま着席し、穴に埋まりたい気分を必死に押さえる。
いやもう人前に立つっていうか注目されるの苦手なんだよね、私は道ばたの雑草でありたい。
ぱちぱちと適当な拍手を聞き流して、心の中で反省タイムを開始することにした。
もう私以降の人の紹介なんてまったく聞こえなかった。

 
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