ベッドに両腕と頭を乗せ、静かに眠る光の姿。
明らかに寝不足な光に僕が「別に帰ってもいいよ」と言ったにも関わらず、光は此処に残ったらしい。
その手にはスケッチブックと鉛筆が握られたままで、それには僕の寝ている姿が描かれていた。……何描いてんのこの子。
取り敢えず光の手からスケッチブックと鉛筆を抜き取り、サイドテーブルに置いておく。
それでも起きる気配がない光は相当ぐっすり眠っている、らしくて。

「……光、」

名前を呼んで、さらさらとした髪に指を通した。
んん、と小さく身を捩ったけれど、やはり光は起きない。
その寝顔は腕で隠されていて見ることは出来ないけれど、どうせ幸せぼけしたアホ面をしているんだろう。無意識に笑みが漏れる。

自分の身体にかかる光の重みと温もりが、心地良いとすら感じる。
もしかしたら僕は、本当に風邪をこじらせてしまったのかもしれない。
だってこんなにも、熱い。

「君がいると、熱いんだ」

心臓の辺りが、じんわりと。
不快なような心地良いような、理由のわからない疼き。

光と初めて会った屋上に行くと。
応接室で光とお茶をしていると。
窓の向こうに、草食動物と話している光を見つけると。
へらりと間抜け面で笑う、光の姿に気付くと。
僕の心臓が痛いくらいに熱を持つのは、いつも君がいるときだ、光。

「なんなの、君は」
「、ん……」
「っ、」

もぞもぞと身体を動かした光に、すぐに唇をきつく結ぶ。
でも光は、やっぱり起きなかった。

溜息が出る。馬鹿馬鹿しい。まるで無くしたパズルのピースを探している時のような気分だ。
探している時は見つからない癖に、忘れた頃にひょっこりと見つかる。

――…その、答え。

「光と群れるのは不思議と嫌じゃないんだ。この意味も、いつか、わかるのかな」

小さく口角を上げながら、光の頭をそっと撫でた。

 
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