翌日、並盛トリオより少し遅れて学校に向かった私。
何故かって?ツナの家に泊まってたって獄寺にバレたらめんどくさいからだよ。


だから。私がリボーンに会ったときにはすでに、並盛トリオとディーノさんは桃巨会へと乗り込んでいってしまっていた。

あの桃巨会さんにとっては迷惑っつーか、もうなんか身に覚えのないコトで壊滅させられるというなんとも可哀相な事件を、どうにか食い止められないかなあと。ほら、ヤクザって結構…街に尽力してくれてたりするんだよね……。
まあ雲雀さんがいるからこそですけど!

そんなわけで、私は走って桃巨会のアジトに向かった。
必要な争いは止めないつもりでいるけど、不要な争いはなくていい。
それに今回ばかりは、私にも出来ることがあるしねえ……不本意ながら。


――…


「何してくれてんだ?ガキどもが…」

うわーすっげー強そうなの来たーっ!!やばいってこれ、今までのと全然違うし!

無意識に足が一歩後退する。それと同時に、強そうなヤクザたちの足は、一歩前に出る。
やばいこれ、俺たちどうなるの。

ディーノさんと獄寺君が何かを言い合っているのをどこか遠くで聞いていた。……ら、カンカンカン、と階段を駆け上がる足音が、聞こえてきた。
そしてその直後に、勢いよく開かれる、事務所の扉。

「っは、はあ……げほっ、走りすぎた」
「んなっ、光ー!?」

扉の向こうには、肩で息をする光の姿があった。
光は手で髪を整えると、数回咳き込んで、深呼吸を1回する。相当走ってきたらしい。そういや光、走るの苦手だって言ってたな。

「何してんだてめぇ!」
「光…っ、何でここに!」

俺の隣まで来た光に、詰め寄る獄寺君とディーノさん。
へらりと曖昧な笑みを浮かべて、光は2人に返事をすることなく、2人よりもさらに前……ヤクザ達の前に、立ちはだかった。

あくまで冷静に。
その姿は凛としていて、光ってこんなにきれいだったろうかと、一瞬考えた。

「……彼ら、私の友人なんです。大切な」

光の姿を目に写したヤクザの人たちは、一瞬動きを止めた。そしてその言葉を聞いて、一歩、後ろに下がった。
何をするのかと、俺を含めた4人ともがすぐに対応できるように構える。
だけどヤクザ達が起こしたのは、予想外の行動だった。

「「「っすみませんでしたあああ!」」」

なんと、ヤクザの人たちが一斉に、光にむかって土下座をしたのだ。
その様子に、光は頭を抱えてうんざりとしているようだけど。

「姉御のご友人とは露知らず……!」
「ご無礼をお許しください!」
「いや、姉御とかまじでやめてください……」
「「ですが!!」」

床に頭を擦り付けたまま、ヤクザの人たちが光のことを姉御と呼ぶ、その状況についていけなくて呆然とする。
それは獄寺君も山本も、ディーノさんも同じだった。

深くため息を吐いて、すぅと息を吸ってから咳払いをひとつ。光は頭を抱えた姿勢のままで、口を開いた。

『それ以上言うなら、咬み殺すよ』
「「っ!?」」
「ひ、雲雀さんの声!?」
『今回はこっちに非があるから、治療費なり修理費なりは払う。けど』

光がしゃべっている。
それは確かなのに、俺たちの耳に届く声は、あの風紀委員長……雲雀さんのものだった。
にこりと口角を上げた光が、組長と書かれたシャツを着ていた人の前にしゃがみ込む。

『並中の人間に手を出すなんて、風紀委員への宣戦布告ととっていいのかな』
「「「「っ申し訳ありません!」」」」
「今後一切!並盛中学校の生徒様に手を出すようなことは、しないので!」

その言葉を聞いた光はすっくと立ち上がり、咳払いを2回してから、くるりとこっちを向いた。

「だってさ。じゃあディーノさん、この人たちへの治療費等のお支払い、お願いします。ツナたちは早く学校行かないと、遅刻したら雲雀さんに咬み殺されるよー」
「お、おう……」
「そうだ、ね」

なんかもう、光のそのときの笑顔がやたら怖く見えて、俺たちは何も言えなかった。

 
back
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -