唐突にケーキが食べたくなった。
その日は学校をサボってたこともあって、思い立ったが吉日とばかりに商店街へと自転車を走らせる。
ラ・ナミモリーヌの前に自転車を停めて店内へ入ろうとした、そのとき。
「あれっ、」
私の視界に、小さな子供が映った。
その子供はラ・ナミモリーヌのショーウィンドウに両手をついて、店内を羨ましげに眺めていた。
ランボ曰く、しっぽ頭、な子供。チャイナ風の服に身を包んでいる、その子……イーピンは、どうやらケーキを欲しがっているみたいだった。
どうしたものかと、イーピンを眺めながら思案する。
ケーキぐらいあげたいけど、言葉通じないだろうなあ。いや、イーピンはわかってくれるっぽいけど、私がわかんなかったらアレだし。誰かリボーン呼んでくれ……!
「……、」
まあ、どうにでもなるか、言葉くらい。
私はイーピンに近付いてしゃがみ、その小さな肩にぽんっと手を置いた。
「ケーキ食べたいの?」
「!」
「そうなら、一緒にお茶しない?私1人でさ、暇なんだ」
何かを喋るイーピンの言葉は、案の定私には理解できなかった。
しかし悩む素振りと、こてんと傾けた首に「でも、いいの?」的な雰囲気を感じて、もちろんと笑って返す。
「謝謝!」
あ、中国語だ。今のはわかったぞ!
「こちらこそ、ありがとう」
私はチョコレートタルトを、イーピンはミルフィーユを頼んで、その後は2人でどうにかこうにか話しながらおやつタイムを楽しんだ。
名前も聞いたし、覚えてもらったぽいし。これはなかなか仲良しになれたんじゃないかな!
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