前略、トリップしました。

桜並木をぼんやり見上げながら学校への道を歩く。
肩には並盛マークのスクールバッグをかけて。制服はクリーム色のジャケットに赤いリボン、紺のスカート。私が行ってた中学は制服がダサかったから嬉しい。

今は4月。私は今日から、並盛中学校の1年生なのだ。

「時が過ぎるのは早いなあ」

ある朝、目を覚ませば知らないアパートのベッドで寝ていて、なんだこれ誘拐された!?とか思ったけど部屋に人の気配は無し。
机の上に置いてあったでっかい封筒を開けてみたら札束が1つ、その何倍もの金額が入った私名義の通帳に印鑑、戸籍みたいなのが1枚、そしてチェーンに通された2つのリングが入っていて。
しかも現住所は並盛だよ!なんて書かれているもんだから私の頭から疑問符は消えない。
けどまあどうやらトリップしたらしいことを暫くしてやっと理解。

うっわ金持ちになってトリップしてしかも一人暮らしとか最高すぎるぜー!そんな感じで楽観的に生活開始。

クローゼットに入ってた制服やら体操服やら鞄やらを見て、並中に入学することも知ってテンションはだだ上がり。
お弁当箱買いに行ったり服とか本とかいっぱい買って、この世界のジャンプも買ってみたりして、たくさんあるお金を遠慮無しに使って新生活にも余裕で慣れた。
ご飯もめんどい時以外は自炊してるし!
最近はちゃんと無駄遣いしないようにしてるし!

まあそして、今日を迎えたわけだ。


カバンに忍ばせておいたデジカメで、並中をぱしゃりと記念撮影。
桜と青空と並中校舎。完璧な絵になるわー!なんて、にこにこ笑顔でデジカメをしまう。風紀委員に見つかって没収なんかされたらたまんないしね。

両親と少し気恥ずかしそうに校門を通り抜けていく他の新入生達を見て、私も校内へと向かった。


――…


「五十嵐光…五十嵐…あった!うっわ1−Aだ」

極力キャラと関わらないようにするぞ〜って意気込んでたのに同じクラスときたか。まあいいや。
ほら私って無駄に人見知りだし……。だいたい並中って小学校からの持ち上がりな子たちばっかだしね、そうそう簡単に友達できないよむりむり。
おーけー地味にすごそう!
そしてあわよくばメインメンバーの写真をこっそり撮ろう。……盗撮とか言っちゃいけない。

1人でのんびりと教室への階段を上がっていたら、入学早々絡まれてる新入生を見かけた。
あーららかわいそうに。巻き込まれないように別のルートを通ろうと背を向けかけた、そのとき。

あれっ、あの子、ツナじゃね?

気付いてしまった。
あの茶髪つんつんヘアーは…そんな滅多にいないよなあ……。
階段の下から、ツナと思われる生徒、それに絡んでる先輩3名を見上げ、ううむと首をひねった。
どうにかしてツナを助けてあげたい、けどツナに私の存在はあまり知られたくない。今はまだ良くてもそのうちリボーン来るからね!痛いのと騒々しいのは苦手です。

んー……仕方ないか。
階段上の彼らに聞こえないように咳払いを2つほどして、ん゙ん、と喉の調子を整える。

『せんせー!こっちで先輩が新入生にたかってますー!』
『ここか!おいおまえら、何やってんだ!』

ちっやべぇ先公だ!逃げろ!おまえ運が良かったな!なんて叫びながら先輩ズは退散する。
それを確認して、唖然とするツナだろう生徒にも、怒声をとばした。

『君も早く教室に行きなさい!』
「えっわっ、はいー!」

焦って走り出す彼に苦笑。声を聞いてわかった。やっぱりあれは100%ツナだ。
ツナがいなくなったのを確認して、私も階段を駆け上る。

チャイムが、鳴った。

 
back
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -