次の日、私は大幅に寝坊してしまった。獄寺も起こしてくれたっていいのに。
学校に着いたとほぼ同時に何故か応接室で雲雀さんに説教された後、とぼとぼと廊下を歩いていたら、中庭の方から女子の叫ぶ声が聞こえた。
あれっ、今の声ってハルじゃね?

「あ、適正テスト……!」

ハルがいるってことは大人ランボがいるってことだ。
んじゃ行ってみよーっと!


下駄箱で靴に履き替えて中庭に行けば、ちょうど獄寺が大人ランボのアクセサリーにいちゃもんつけているところだった。
朝起こしてくれなかった怒りも相俟って、その光景にイラッときた私は小走りで獄寺たちに近付いていく。
いち早く私に気付いたハルが私の名前を呼んでいたけど、まずはこっちだ。ごめんねハル。

「何してん、のっ」
「ってぇ!」

げしっと一発。右足で獄寺の背中に足形を強めにつけてやれば、前につんのめった獄寺が勢いよくこっちに振り向いて、ガンをとばしてきた。
もう慣れてあまり怖くないし!あまり、だけどね!

「わ、若き光さん……っ!?」
「ごめんねランボ、このいじめっ子は私がシメとくから」

にっこり笑う私の右手には、獄寺の上着の裾がしっかりと握られている。離せ離せとわめく獄寺を離す気なんて、欠片もありませんが何か?
なんっかランボって庇護欲煽られるんだよね。母性本能くすぐられるっていうか?守ってあげなきゃーみたいな。ルール無用なら戦闘力はランボのが上なんだけど!

よしよしと獄寺を掴んでる手と反対の手で、高いところにある大人ランボの頭を撫でる。
その傍で、ツナがキョトンとこっちを見ていた。

「何で光、大人ランボがランボだってわかったの……?」
「……、え」
「そういえば、おまえ大人ランボ見たことねぇはずだよな」
「あ、え、うん」
「……何故だ?」

ツナ、獄寺、リボーンの順番でまくし立てられ、うおうと言葉に詰まる。
ナチュラルにランボって呼んじゃったけど、普通わかんないよね……!私こんなこと多いなあ、気を緩めすぎてる証拠か。

「獄寺が呼んだからじゃねーか?」

言い訳を考えている私の頭上から、ぽすんと頭に柔らかい衝撃と声が降ってきた。
予想外な助け船を出してくれたのは山本で。そういえばさっき獄寺、思いっきり「アホ牛」って言ってたしな……忘れてた。
てか山本って記憶力いいよね。……あれ、私が忘れっぽいだけ?

あ、って顔をしたツナと獄寺。
リボーンは表情を変えなかったけど。

「そ、そうだよ、君がランボのこと呼んだから、じゃあランボなのかなーって。リボーンがいるから何でもアリっぽいだし……」
「……否定できない」
「光は俺を何だと思ってんだ」

迷惑製造マシーン……。
あ、いや何でもないです。

「……凄まじい人、かな……」
(光……迷惑製造マシーンとか考えてそう)

ツナからなんだか視線を感じる。
何?超直感で迷惑製造マシーンを見抜いたとかじゃないですよね?違うよね!

「あ……あのっ、若き光さん!」
「うん?どうしたの、ランボ」
「お、俺は……その、」

言い淀む大人ランボに、もしかして未来の私について何かあるのかと思ってちょっと焦る。
あの、その、と口を開けたり閉めたりする大人ランボ。
落ち着いて、ゆっくりでいいからと、続きをそっと促した。数秒の間を開けて、大人ランボがやっと言葉を発しようと、すぅと息を吸い込む。

「光さ」

ボフンッ!
私の名前を呼んだ瞬間、大人ランボは突然現れた煙に包まれた。

「ちょっ、えぇえ!?」
「あ、5分経っちゃったんだ」

そりゃねーだろ。
ランボ何言おうとしたのおおお気になるー!

ぽけーっとした顔で地面に座り込んでるランボが我に返って、光だもんねー俺っちと遊んでー!!と私にタックルかましてくるまで、私は悶々と大人ランボが言おうとした言葉について、悩み続けた。

 
back
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -