宿泊研修も終わり、再び始まった通常授業中の教室にて。
私は毎度の事ながら、と睡眠学習をとっていたのだけど、ざわざわと教室がざわめきだしたのが聞こえて目が覚めてしまった。せっかくぐっすり寝てたのに。
くあ……とあくびを一つして、目をこすり、腰を左右に捻って固まった身体をほぐす。

「んー…?」

そして何事かと教室をきょろきょろ見回し、このざわめきの原因を発見した。

「ガ・マ・ン……」
「ランボー!!」
「っえ、ランボ!?何して……」

あっもしかして保育係の回なのか今日!
今にもダムが決壊しそうな顔でぷるぷる震えるランボに、うわあと頭をかかえる。

「ツナ、光、チャック壊れてしっこできない」

涙目なランボの言葉に、教室に笑いが広がった。それはまあ、ツナを笑う声なんだけど。
別段笑うことじゃなくね?と思いながら、まあそれはあれか、私が年だからそう感じるだけかと自己完結して、ガタンと席を立った。

瞬間、教室から笑い声が消える。

「おいでランボ」
「光ー!!」

ぶわっと涙をまき散らすランボを抱き上げて、他の生徒には目もくれず教室のドアを目指す。
ドアを開ける直前、黒板の前で固まっている先生に、ちらりと視線を投げた。

「この子知り合いの子なんです。紛れ込んじゃったみたいなんで、連れてってきますね。あとついでに早退します」
「あ、ああ……って早退するな!」
「え、嫌」
「ちょっ、光!?俺も行くよ!」
「まじ?じゃあ行こ」

慌てて立ち上がったツナと2人で教室を出て、ランボを急いでトイレまで向かわせる。
もちろん、ぎゃーぎゃー言ってる先生は無視させていただきました。ごめんね先生。


まあランボのことは……結論として、アウトだった。
女子トイレに入るか男子トイレに入るかでツナと戸惑っているうちに、ランボダムは決壊してしまった。まじごめんランボ。
でも制服に涙と鼻水をつけないでください。

びしょびしょの床をしょんぼり状態の2人でぞうきんを使って拭きながら、ツナに顔を向ける。
ここは1人でも足りるよね。

「……うん、ツナ。保健室行ってタオル2枚貰ってきて。あと教室にある私のジャージとカバン」
「後半ただのパシリだよね!?」
「えっ気のせいだよ」
「今声裏返ったけど、せ、の部分」
「お願いします綱吉様……」
「ああうん……とりあえずランボのことはごめん。取りに行ってくるよ」
「うい。ありがとー」

まずは1階の保健室へと走っていったツナを見送り、ぐずぐず泣いているランボを抱え上げて女子トイレに入る。
てかツナ、走ってんの風紀委員に見つかったら怒られるぞー。

この服、チャックとか付いてたんだなあと考えながらどうにかこうにか服を脱がせて、濡らしたハンカチでランボを洗った。
恥ずかしいとか騒がれたけど、知るか!
昔はよく甥っ子のオムツ替えたりしてたなあ。顔面におしっこかけられたあのトラウマは忘れられない……。

「はい、綺麗になった」
「つ、冷たくて寒いんだもんね!」
「その前に言うことは?」
「!えっと……ありがとう?」
「正解、どういたしまして。もうすぐツナがタオル持ってきてくれるから、それまで寒いの我慢してね。ハイ飴玉」
「ブドウ!ランボさん我慢する!」

口内でブドウ味の飴玉を転がすランボに制服の上着をかけて、ツナが来るまでランボの汚れた服をじゃばじゃばと洗っておく。
ぎゅっぎゅと服をぞうきん絞りしていたら、外からすんごい控えめに私の名前を呼ぶ声が聞こえて、うん?と顔をあげた。
あ、女子トイレだからツナ入れないのか。

ランボを抱えてトイレの外に出れば、なんだか少し疲れた風のツナがため息をついて壁にもたれていた。
この10分前後で何があったんだ君に。

「廊下走ってたら、風紀委員の人に見つかって……」
「おおう……お疲れ様です」

そら疲れるわな!

ツナが持ってきてくれたタオルにランボを包んで、その上から私のジャージを着せる。
これでいいかな、うん。

「寒くない?」
「平気ー!」

にぱあと笑うランボにそっかと返して、下駄箱へと歩き出した。
ツナも一緒に帰ることにしたらしく、私のと合わせて自分のカバンも持っている。私のカバンをツナから受け取って、3人で沢田家に、のんびりと歩いて帰った。

ちょっとだけ、家族みたいだなあとか思ってごめんなさい。

 
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