がたがたと揺れるバスの中で、みんな宿泊研修の思い出を語り合っている。中には寝ている子もいるけれど、私たちは、思い出語りをしている側だった。
とは、言っても。

「ロクな思い出ないわ……」
「そりゃおまえは肝試しモゴガッ」
「センセー、獄寺君が今すぐトイレ行かないと漏れそうだそうでーす」
「我慢しろー」
「もごふがもご!」
「獄寺、何言ってるかわかんねーのなー」

えっ獄寺君が漏れそうだなんてそんな……的な女子の戸惑いの視線と、獄寺でもそんなことあるんだなー的な男子の笑い声。それに真っ赤な顔で叫ぶ獄寺。
うん、これで私の思い出に笑えるところが増えたぞ。

残念ながら帰りのバスの席は京子ちゃんも花も遠いので、並盛トリオに囲まれての帰り道となった。
通路側が私で隣にツナ。私の前が獄寺で、その隣が山本。そんな感じ。

「でもま、確かに肝試し終わった後の光のテンションはすっげー低かったよな。大丈夫だったのか?」
「いやまあそこには触れない方向で……。つーか大変だったのはツナの方じゃん?」
「あー……はは、」

遠い目をして、乾いた笑いを漏らすツナ。
なんというか、案の定ツナが回るときにはリボーンが絡んできたそうで、結果パンツ一丁になるハメになったとか。
まあその頃私と獄寺は軽く遭難してたんで、そうなんだーとしか言えなかったんですけどね!別に今の狙ったわけじゃないよ!

「お疲れ様、ツナ」
「うん……光もね」
「十代目!お疲れなら肩をお揉みしましょうか!!」
「なら俺は光の肩揉んでやるのな」
「「えっ」」

2人の申し出にツナと2人して顔を見合わせて、どうすべきかと硬直する。
座席に膝立ちになってこっちを振り返っている獄寺と山本は、にこにこと屈託のない笑みを浮かべていた。

「……じゃ、じゃあお言葉に甘えて…?」
「本当にいいの?獄寺君」
「勿論です!お役に立てて光栄です!!では失礼しますね」
「光と獄寺が席替わればやりやすいと思うんだけど」
「あ、そうだね」

そんなこんなで獄寺と席を交換こして、私は山本に、ツナは獄寺に背を預ける。

んじゃ始めるぜーって私の肩に手を置いた山本が呟いたから、私も軽く頷いた。
そして、激しくその行動を後悔した。

「――っ痛い痛い痛い!!」
「え、そんなに痛いかー?」

今ボキゴキグキって、鳴っちゃいけない音がした。絶対何本か骨イったってめっちゃ痛いもん!!
はははーなんて笑ってるけど山本、これもう笑い事じゃないよ!そして続けないでくださいまじめにお願いしますぅうう!

「や、やまもと、もういい、つか、私がやったげるから、もうやめていいよ」
「ん?でも始めたばっかだしな!遠慮すんなって」
「あれっ遠回しに言ったから?気付いてくれない……。遠慮じゃなくて、」
「ほらほら、すぐ気持ちよくなるから」
「それなんか開けちゃいけない扉開けちゃってるよね絶対」
「いーから俺に全部任せろって」
「ちょっ、」

その直後、バスの中には人の骨が鳴らすとは思えないエグイ音が鳴り響きましたとさ。
笑えないわ……。

ちなみにツナは獄寺のマッサージによってそれなりにリラックスしてました。

 
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