竹寿司ののれんをくぐり、がらがらと引き戸をあけて店内へ。
おっ!と顔を上げた人は笑顔で、私もにこりと笑みを浮かべた。

「おじさん、こんばんは!」
「おお光ちゃん!久しぶりだなあ」
「最近はちゃんと自炊してるんでー」
「そりゃぁいい!いいお嫁さんになるよ」
「だといいんですけどねえ」

なんて世間話をしながら、いつものカウンターに座る。
そこで奥から聞き慣れた声が聞こえてきて、うん?と首をひねってから失礼だと思いながらも奥をのぞき込む。

「……あ」

思わず声が漏れた。

その声に気が付いたのか、奥にいた2人の視線がふいっとこっちに向く。そして2人の口からも、「あ」と声が漏れた。

「光!?」
「五十嵐じゃねーか!うちに来るのは久しぶりだよなっ」
「っえ、久しぶり?」
「ん?五十嵐はよくうちに食べに来てたんだぜ」
「あ、そ、そうなんだ」

ツナと、山本。
2人が奥で皿洗いをしてるってことは……あれか、食い逃げ事件の後だ。
ああだから最近ずっと獄寺がびくびくしてたのかーと、合点がいく。取り敢えずここは、知らんぷりしてなきゃなあ。

「何でツナがここで皿洗いしてるの?」
「それがまあ……いろいろあって」

山本とツナの口からことの顛末を実際に聞けば、へらりと浮かべていた笑顔が引きつった。
獄寺もだけど、リボーンにビアンキにランボ……ランボはまだ小さいから仕方ないとはいえ、残りは常識持ってる大人だろう。ツナの修行をかねてるとしても、さすがにこれは無理がある。無茶すぎる。

頭を抱えてはあぁとため息をこぼせば、何故かツナに謝られた。
何で君が謝るのさ。

「むしろこっちがごめんだよツナ……とにかく獄寺はシメとくから!」
「えっえぇ?!」

帰ったら待ってろよあのタコヘッド。
にっこりと満面の笑みを浮かべた私に、驚くツナ。その隣で山本が、じぃっと私を見つめてきた。

「五十嵐ってさ、獄寺の時だけ俺たちと態度違うよな」
「え、そう?」
「確かに、そんな気がする」
「ううん……んー…なんかもう獄寺は弟みたいな感じだから、かな」

ツナや山本は、もうなんか、天使ー!まじ可愛い格好いいー!!って感じだけど、獄寺はもうそういうの無いからなあ。
最近になってはもう、ツナに迷惑かけてみろ燃やすぞ、ぐらいのレベルになってきてる気さえする。……少し抑えるべきですね…!

「あ!それより、私も手伝うよ」
「えっ、い、いいよ!俺のことだし……」
「……、私が手伝いたいだけだから。おじさん、私もお手伝いしていいですか?」
「お、いいのかい?」
「もちろんでっす!」

にへらと笑って、私も裏に回る。
ごめんとありがとうをツナに告げられ、私の勝手だから気にしないでと返せば、山本に頭を撫でられた。

「五十嵐っていいやつだよなー」
「そっそんなことないよ」

わしゃわしゃと頭を撫でられるのは照れくさい。
山本ってナチュラルにこういうことやっちゃうからあんなにモテるんだろうね!うああ顔が熱い。


その後は3人で学校のこととかリボーンの話とかしながら、皿洗いをしたりお客さんが使った後のテーブルを拭いたりとお手伝いに精を出して。
今日1日の仕事が終わって3人でお茶を飲んでいたら、そういえばと山本に声をかけられた。

「何ー?」
「五十嵐ってさ、俺のこと何て呼んでる?」
「?山本君」
「ツナは?」
「ツナって呼んでるよね」
「う、うん」
「獄寺は、」
「獄寺」
「んじゃー俺も呼び捨てで呼んでほしいのなっ」
「山本、って?」
「そうそ!」

なんだなんだ。山本の笑顔かわいいな。

ぽかんとしてたら、山本はお茶を一気に飲みきるとニカッと笑って私の頭をまたくしゃくしゃになるまで撫でた。
真っ赤になる顔のままで、山本の手を離す。

「俺も光って呼んでいいか?」
「……どうぞ」

山本の天然たらしっぷりに、もう何も言う気が起きない。

「山本って、光の頭撫でるの好きだよね……」
「なんか撫でやすいんだよなー」
「撫でやすいって何さ……」

 
back
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -