借り物競走も無事終わり、別の競技もいくつか終わって、ちょっと向こうでは拍手喝采を受けている山本の姿。
それを見つつ、ピョンピョンレースのために入場門へと歩いていく。
「あ、光」
「?あ、ツナ」
入場門には、すでにツナがスタンバっていた。ああ、そういえばツナもこれ出てたなあ。
恥ずかしいよね、このレース。
「まあ……お互い頑張ろうね、大将」
「……うん」
「てか、風邪大丈夫?」
「えっ?!何でわかって……」
いや顔色悪いし、変に汗かいてるし、普通に原作知識とか関係なしにわかると思うんだけどな……。
そりゃわかるよ、と軽く笑えば、わかってくれるのは光だけだよと若干泣かれた。
そ、そこまでか……。計り知れないツナの苦労に同情せざるを得ない。まあそれがいつか良い出来事だったと思える日が来るよ、きっと。多分。
「にしてもピョンピョンレースって何でやるんだろうね。んなに恥ずかしいの」
「本当にね!」
始まったレースに、大きくため息をついた。
スタートしたツナを手を振って見送り、私も女子の準備のため列に並ぶ。
ちなみに結果は、ツナはドンケツ。私は3位だった。まあそんなもんです。
――…
そしてお昼を挟んで。棒倒しも混乱のまま終わり。
今、俺の目には、光の前で土下座している獄寺君と京子ちゃんのお兄さんが写っています。
すげー、光のバックに鬼が見えるよ……。アジトの時以来だ、こんな光見るの……。
「獄寺隼人くん」
「はい」
「私が言ったこと、覚えてないんですか?」
「……いいえ…」
「またツナのことを忘れて?笹川先輩と喧嘩して?ツナを落としちゃった?へえ…最近の右腕ってすごいんだねえ……?」
腕を組んで獄寺君を見下ろす光は、笑っているにもかかわらずかなり怖い。光って、河原での時も思ったけど…こんなキャラだったんだ……。
獄寺君はかなり畏縮してしまっているのか、土下座体制から動かない。
「あの、光……俺なら大丈夫だから、」
さすがに可哀相に思えてきて光を見上げれば、光はむぅと眉尻を下げて、困ったように笑った。
そしてすとんと獄寺君の前にしゃがみこんで、くしゃりと頭を撫でる。
「私、獄寺はツナのことを一番に考えてるし、すごく大切なボスだと思ってることも知ってるよ。だからこそちょっとしたことですぐにキレちゃって、ツナを危険な目に遭わせる獄寺は許せない」
「……、ああ…」
「私にどうこう言う権利は無いけどね。ごめん」
ツナもごめんね。
そう呟いて、曖昧な笑顔を浮かべたまま、光はその場から去っていった。
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