偶然会ったリボーンに拉致られて、ツナの家で久々の晩ご飯。

ちょうど獄寺がイタリアにダイナマイトを仕入れに行っていた日だから、特にご飯を作る気がなかった私にとってはありがたいお話。
ツナとも前よりはずっと仲良くなれたと思うし、ランボは基本可愛いし、奈々さんの料理は美味しいし、ほんと沢田家大好き。

ごちそうさまをしてから、奈々さんとお皿洗い。さすがにタダ飯食べ続けるわけにはいかないもんね。働かざる者食うべからず!
むしろ私が洗い物全部引き受けたいくらいなのに、いいのいいのと奈々さんは言ってくれるから、いつも2人で洗っている。奈々さん曰く、娘とこうやって台所に立ってみたかったらしいので。まあ奈々さんが喜んでくれるのなら嬉しいかぎりだよ!

「光、終わったらツナの部屋に来いよ」
「うん?わかったー」

肩に跳び乗ってきたリボーンの言葉に頷けば、にんっと笑ってリボーンはまたぴょこんと私の肩から跳んでいった。綺麗に着地して、ツナの部屋にとてとてと歩いていく姿は可愛いと思う。

最後のお皿を拭き終えて、私も奈々さんと少し会話してから、ツナの部屋へと向かった。

「入るよー?」
「あ、うん!どうぞ」
「おせーぞ光」
「ごめん?」

部屋のドアを開けてくれたツナの後ろで呟いたリボーンに疑問符つきで謝れば、まあ気にしてねぇけどなと返されて更に疑問符。なら言うなよっていう。
開けてくれたツナにお礼を言ってから部屋にお邪魔して、適当な場所に腰を下ろした。

「五十嵐さん、最近来なかったけどちゃんと食べてたの?」

少しの間の後に、心配そうに私の顔を覗き込んで問いかけてきたツナ。
なんか、君まで私の食生活を心配するまでになったとは……これからはもうちょっと気を付けよう……。

しかしみんなして私のお母さんか?って言いたくなるくらいの心配っぷり。
買い物前の私の冷蔵庫を見た獄寺にも「人のこと言えねぇじゃねーか!」って怒られたっけ。いやはや面目ない。

「うん、最近はちゃんと作ってるよ。朝昼晩しっかり!」
「そう?なら良かった」
「おまえは放っておくとまたアイス生活しそうだからな」
「夏も終わるし、さすがにもうアイス生活はしないよー」
「あ、でも、五十嵐さんが来たら母さん喜ぶからさ。また暇な時にはいつでもうちに来てね」

にこっ。天使の笑顔を浮かべるツナにノックアウト寸前である。
顔がにやけないよう必死に平静を保ちながら、私もにこりと笑った。

「沢田君はいい子だよねえ」
「えぇっ!?」
「私も沢田君みたいな息子が欲しいわー」

可愛いし可愛いし可愛いし。
しみじみ呟いた私に、軽く頬を染めながら慌ててるようなツナにまた顔がにやける。

よくよく考えてみれば私かなりの幸せ者だよなあ。ツナ達と話せて、友達みたいな存在にもなれて。うん、幸せすぎるや。

そんなことを考えながらツナを眺めていたら、目が合ったツナに、急に頭を撫でられた。
っえ、何?きょとんとする私を見て自分が何をしたか気付いたのか、ツナはうわわっ!と慌てながら手を離す。
ツナの撫で方が優しかったからか、それがなんとなくもったいないなーなんて思った。

「ごっごめん!なんか、五十嵐さんが、落ち込んでるように見えたから……つい、」
「……落ち込んで、る?」
「いや、あの……えっと、」

顔赤い、ツナ。
ほんとに女の子慣れしてないんだなあと思いながら、小さく首を傾げる。

落ち込んでる。……私が?
いや、落ち込んではないと思うんだけど……ツナにはそう見えたのかな……。

何かを言い淀んでるツナに、下げていた目線を向け、言葉を待った。

「俺みたいなダメツナじゃ、何の役にも立たないと思うけど……何か悩みがあるなら、言って欲しいんだ。あ、えっと……その、五十嵐さんは友達、だから」

へらりと、恥ずかしそうな笑顔を浮かべて。

友達。ツナのことだから、本当にそう思ってくれてんだろうな。

結構真剣な状況なのに、思わず顔がにやけた。もう完全ににやけた。
どうしよう、すっごく嬉しい。ツナに友達って言ってもらえるのが、こんなにも嬉しいとは思わなかった。
きゅううんって心臓が締め付けられるような感覚に目眩すら覚えて、にやけた顔が見られないように口元を手の平で覆う。

「……あ、あの、五十嵐さん?」
「ごめ、ちょっと待って、落ち着く」

口元を押さえたままツナから顔を背けて深呼吸。
後ろからガキだなってリボーンの声が聞こえたけど、いやこれは仕方ないだろう。だってツナが!こんなにも可愛いから!!

「あー…ありがとう、沢田君。その言葉だけで救われるよ」
「い、いや……」
「悩みっていうか、ちょっと不安を感じてただけ。でも、大丈夫だから」

大丈夫。この世界にはちゃんと、私の存在意義があるから。
…――きっと。


「……あ、そうだ。沢田君さ、名前で呼んでもらえないかな?」
「え?」
「五十嵐さんってめんどいでしょ?光でいいよ」

雲雀さんもリボーンも、獄寺でさえ最近名前呼びになったし。
こうなったら全キャラ制覇したいですね!そうだ、この世界での目標は好きなキャラ全員に名前で呼んでもらうにしよう。なにそれ最高すぎる。

ちょっとの間おろおろしてたけど、ツナはごくりとのどを鳴らしてから、ゆっくり口を開いた。

「じゃ、じゃあ…光」
「ー…っ!」

やっばい萌え死ぬ!

赤い顔して私の名前を呼ぶツナは最終兵器だと思いました。
後ろでリボーンめっちゃぷくくく笑ってるけど。にへらと緩みまくった表情で、何?と返せば、ツナは真っ赤なままの顔で、可愛くほほえんだ。


「俺のことも、名前で呼んで?」

 
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