今日の天気は曇り。
いつもより涼しげな風が吹いている上に、太陽は照っていない。曇っている割にはさほど湿気もなく、これ幸いと私は買い物に出かけた。
たまには自炊しないと腕が鈍るし、無駄にあるお金に物言わせて揃えた調理器具が可哀相だもんね。

そして、3つものスーパーの袋を抱えてアパートに帰宅。
駐輪場に自転車を停めたところで、後ろからどさっと、何かを落とす音が聞こえた。うん?と思って首を背後にひねれば、でっかいゴミ袋を地面に落としたのも気にせず、私をガン見する銀髪男子が1名。

……な、何でここに?

そう思ったのは私だけじゃなく、銀髪男子こと獄寺も同じなようで。
驚きで目を大きく見開いている獄寺は、数秒間そのままで停止していると、ハッ!と我に返ったように私の方へ大股で歩み寄ってきた。
おや、嫌な予感がするぞ。

「てめえはこの前の……何でここにいやがる!」
「え、いやここ私の」
「もしやと思っていたがこれで確信したぜ。てめえスパイだな!?どこのファミリーだ!」

おい質問したなら最後まで言わせろよここは私の家だよちくしょーめ。

スーパーの袋、自転車のかごに突っ込んだままで良かったなあなんてぼんやり思いながら、獄寺に掴まれた胸ぐらに目をやって心の中でため息。
獄寺はね、嫌いじゃないんだけどね、まっすぐすぎてたまにイラッとするよね!

「とりあえず落ち着こうか獄寺君」
「十代目を落とすにはまず右腕の俺からと思ったのかもしれねぇがそうはいかねえ。十代目は俺が守る!」
「いやだから話聞けっての」

いい加減首しまってるの苦しいんだよ!

「私はただの一般人ですスパイなんかじゃありません。それにてめえじゃなくて五十嵐光って名前あるし。だいたい沢田君を落とすって何?どこに落とすの?むしろ私が沢田君に落ちてるわ!……っじゃなくて、とにかく手ぇ離してください買ったばかりのアイスが完溶けしたらあんたの所為だからな、あっ間違えた、獄寺君の所為だからね!」

アパートの隣に住んでる宮本さん直伝、真っ黒な笑顔をにぃっこりと浮かべる。すると、獄寺は一瞬さぁっと顔を青くして私から手を離した。
おお……宮本さんすげえ。今度から積極的にこれ使っていこう。暗黒微笑。

「ここのアパートの204号室が私の部屋なの。それより獄寺君こそどうしてここに?」
「……まじかよ」
「どしたの」
「205号室は……俺の部屋、だ」
「……、」

一拍、あけて。

「はああ!?」

この世界に来て1番のびっくりだよ!

……いや1番は雲雀さんが実は甘党だったってことか…?いやしかし獄寺が実はお隣さんでしたの方がインパクトはでかいよな……。
やっぱり1番のビックリだよ!!

獄寺も驚いてるのか頭を抱えてふっかいため息を吐いている。いやため息つきたいのはこっちだ。

「……と、とりあえず、私がスパイとか、よくわかんないけどそいういうのじゃないのはリボーンがよく知ってるから」
「まあ……五十嵐みたいなぼけーっとした奴がスパイなんかしてたら、そこのファミリーはよほどの馬鹿だな」
「そうだね、埋まる?」
「え」
「あっごめん、つい癖で」

昔の友人とよく、「埋まる?」「いやあたし苗とかじゃないし」「じゃあ埋まれ」「命令!?」みたいな言い合いをしてたなあ、なんて心の片隅で思い出しながら、冗談だよと獄寺に平謝り。
なんか獄寺顔面蒼白だけど大丈夫?そんなに埋まるのやだった?


ふと放置されたままのゴミ袋が気になって、ひょいっとそれを持ち上げる。
中はインスタント食品のゴミだらけで、むしろそれ以外のゴミが見あたらないくらいだ。他に見えるのは、コンビニ弁当とかおにぎりのゴミ。
思わず唖然として、ゴミ袋から視線を離し獄寺に向けた。

「今朝、何食べた?」
「あ?コンビニのおにぎり」
「……昨日晩は」
「コンビニの牛丼」

あっこの人自炊できない人だ。
ぽかんとしてる私を、頭大丈夫かこいつ的な視線で見てくる獄寺を一発殴りたい衝動に駆られながら、私は勢いよく獄寺を指さした。おお、びっくりしてる。

「十代目を守るとか何とか言ってた人がこんな食生活でどうすんの!?カップ麺とコンビニばっかじゃん!こんなのすぐに身体壊しちゃうよ!どうせ昼もパンとかばっかなんでしょ?そんな生活してる人が右腕名乗って沢田君を守れるとでも思うんですか!」
「……っ、!?」

驚いてるな、と思いつつも言葉は止まらない。
ほっとけない子だなあとは、漫画を読んでた頃からずっと思ってたんだ。

「中学生は大事な時期なんだよ?そんな時にこんなのばっかり食べてたらすぐになよなよになっちゃって、山本君に身長は勝てないわ腕力も瞬発力も劣るわで、右腕は山本君になっちゃうかもね。それでもいいの?」
「よ、良くねぇに決まってんだろ!」
「じゃあちゃんと食べなさい!」
「作れねえんだから仕方ねぇだろうが!!」

今にも噛み付いてきそうな雰囲気の獄寺に、今度は隠しもせず深ぁい溜息をこぼして、私の自転車に乗せていたスーパーの袋を2つ、無理矢理持たせた。
ちなみにゴミ袋は回収場所にちゃんと置いておきました。

いきなり荷物を持たされた獄寺は呆然と私を見下ろしてくる。

「じゃあ今日から私が獄寺のご飯作るから」
「はあ!?」
「大丈夫大丈夫、味は保証する。獄寺君が立派な右腕になって沢田君に頼ってもらえるように栄養とかすごい考えて作るから、だから……食え」

最後のところで、また、宮本さん直伝の笑顔を浮かべてみた。
獄寺は、う、と言葉に詰まって目を泳がせていたけど、少し悩んで答えが出たのか、頬をぽりぽりとかきながら口を開く。

あ、顔赤い。

「十代目の為だからな……た、頼む…ぜ」
「任せろー」

そんなわけで、獄寺のご飯係は私になりましたとさ。

 
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