そしてツナの家で宿題を手伝うことになった、んだけども。
「これはこっちの公式」
「……え、え?」
「そこを代入して」
「ううん……?」
「こっちに移項して計算したら終わり」
「解けたぜ」
「「……?」」
「獄寺君は流石だね。山本君と沢田君は……だいじょぶ?」
数学が予想外に難しかったのか、山本は授業中眠ってたのが原因だと思うけど…、2人は苦戦気味だ。
獄寺は獄寺でさっさと解いていってるけれど。さすが天才。
奈々さんが持ってきてくれたジュースを飲みながら、山本やツナのミスを指摘したり、問題の解き方を教えたりしていく。
自分は数学のプリントももう終わらせて、歴史のプリントに取り掛かり始めた。
人にものを教えるのは苦手なんだけど、まあ目の保養にもなるし、お寿司かかってるし、頑張ろー。
「五十嵐さん、これは?」
「2番と同じやり方で解けるよ」
「ん……あ、そっか!ありがとう」
「いえいえー」
その後はちょいちょいアドバイスしながらも、4人とも黙々と問題を解いていく。
なんだかもっと騒々しいのを想像してたから拍子抜けした。てっきりランボかリボーンが乗り込んでくるものかと。思っていたよりずっと平和だ。
これならツナたちと仲良くなるのも悪くないなあ。……まあ、リボーンが関わってくるとそれも平和じゃなくなるんだけど。
「なあ五十嵐」
「うん?」
「五十嵐ってどこから来たんだ?小学生ん時はいなかったよな?」
「……、え、っと…」
数学のプリントが終わったらしい山本の問いに、言葉に詰まった。
どこから来たって、言われましても……。異世界でっす!なんて言えないし。
はは、と曖昧に笑いながら、なんて答えようか必死に考える。なんかもう外国とかでいいかな、いっか。なんかかっこいいし。
うん、それでいこう。アバウト万歳。
「家庭の都合で、海外をうろちょろしてた」
「へえー!すげえんだなっ」
「じゃあ五十嵐さんって英語とか、得意なんだ?」
「あー……一応、英語とイタリア語は話せる、はず」
親が海外旅行趣味だったからあっちこっち行ったことあるのは事実だしねえ。
フランス語も勉強させられたけど、途中でトリップしちゃったから中途半端なんだよね。
「ってことは五十嵐も帰国子女ってことか。獄寺とお揃いだな!」
「だから何なんだよ……」
「まあ、帰国子女って結構どこにでもいるし」
呆れたような顔をする獄寺と、苦笑を浮かべる私。お揃いって思考に辿り着く山本は可愛いなあとは思うけど。
4人とも宿題が終わったときには、もう夕方になっていた。
プリントを整えてファイルにしまいながら、ツナが私に顔を向ける。私もちょうどプリントをカバンにしまっていたところで、その視線に気が付いて手を止めた。
「五十嵐さんのおかげで助かったよ、ありがとう」
「いやいや、ちょっとアドバイスしただけだから、そんな」
「でも五十嵐の教え方、すっごいわかりやすかったのなー」
にかっと笑う山本に頭を撫でられ、思考回路はショート寸前である。
なんだこの子そんなにフラグ立てたいのか!ありがとう大好きだ!
向かいでむっすりとしてる獄寺に、また苦笑。きっと教える立場だったのに、私にポジション奪われてむかついてたんだろうなあ。
「そうだ、五十嵐さん、晩ご飯食べていかない?」
「え?いやいや悪いよ」
「あ、そっか……もうお母さんが準備してたりするのかな」
「いや、親はいないからいいんだけど」
「……え、?」
一瞬、室内の雰囲気が硬くなる。
しまった、と思った頃にはもう遅くて、なんとも言えない表情の山本に顔を覗き込まれた。
「五十嵐って一人暮らしなのか?」
「あーっと……家庭の事情で?」
……余計に微妙な空気になってしまった。
どうしよう、さっきからずっと苦笑してるんだけど。なんかもう誰かどうにかしてくれこの空気。私にはどうしようもできない。
そんなことを思っていたら、がちゃりと開いたドアから黒いスーツの赤ん坊が姿を覗かせた。
「いいから食っていけ、五十嵐光」
「……、っと…」
「おまえにはいろいろ聞きたいことがあるしな」
黒いスーツを身に纏った赤ん坊……リボーンは、私を見上げてニンッと笑った。
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