やっと修行が終わったと思えば、親方様が父さんだって判明するし、ランボが危ないってことになってるし、慌てて走っていけばランボ達襲われてるし、イーピン怪我してるし、ランボは訳わかってないし。
お兄さんや獄寺君、山本のおかげで何とかなったけど、ヴァリアーなんて本当に相手したくない。絶対ヤバい。
……光のことだって、まだ何もわかってないのに。

「しかし思ったより骨のない連中だったな。楽勝だぞ!」
「そいつは甘ぇぞ。こいつらはヴァリアーの中でも下っ端だ。本当に恐ぇのは……」

リボーンがぱっと、視線を別の方に向ける。釣られてそっちを見ると、誰かが飛び出してきて、壁の上に着地した。
思いっきり睨み付けられて、足が竦む。俺以上に、直接睨まれたランボが顔を真っ青にしていた。

「邪魔だてすれば、皆消す」

暗がりでよく見えないけど、明らかにやばそうな男が武器を手にしようとする。
俺と違って獄寺君と山本とお兄さんはすぐに反応したけど、誰かが動くより先に、大きな声が辺りに響いた。

「待てぇレヴィ!」

何人かの影が男の周りに着地する。
サングラスに、ロボットみたいなのに、小さいのに、金髪に、……あの日の、銀髪。

そして。

「……退け」

低くて重たい声なのに、妙に響くそれが、銀髪の後ろから聞こえてきた。
現れたのは、大きな男。……威圧感が、すごい。

「出たな……まさか、また奴を見る日が来るとはな」

――ザンザス。
そう、リボーンが呟く。ザンザスっていうらしい男は俺をじっと見下ろしていて、……動けない。今まで感じたことがないくらい恐くて、足の力が抜けた。

瞬間、ザンザスの背後に、誰かが見える。
さっきまで7人だったはずなのに、いつの間にか8人になっている。
誰だろう、女の子……みたいだけど。

余裕もないのにそんなことを考えていると、ザンザスの足下につるはしが刺さった。
その後は父さんとザンザスがいくらかの会話を続けて、九代目からの勅命を渡される。そうして、同じ指輪を持つ者同士の、1対1のガチンコ勝負をするんだと言われて、冷や汗が垂れた。
指輪なんて、あいつらにあげちゃえばいいのに、そんな勝負してる暇なんて無いのに……。

でも、もう決まったことらしい。ヴァリアー側もそれで納得したのかしていないのか、とりあえず去っていこうとしている。
ザンザスが背を向けて歩きだしたことで、背後にいた女の子の姿が、はっきり見えた。

あれ、は。

「光……!?」

半ば叫ぶように声を出したのは、俺よりも獄寺君の方が先だった。
そうだ、あれは確かに光だ。14日からどこに行ったのか誰にもわからなくて、家にもいないし連絡もなくて、また変なことに巻き込まれてるんじゃ……って何度も捜した。あの、光だ。
でも、じゃあ、何で光が、ヴァリアーに?

「っおい、光!!てめえそんなとこで何やってやがんだ!おい!」

獄寺君が叫ぶ。山本は、何でかだんまりで、ただじっと光の方を見つめていた。リボーンも、口を開かない。
光は俺達の方をじっと見つめて、ぱちぱちと瞬きをしている。とても、不思議そうな表情だった。まるで、俺達が誰なのか、わかってないみたいに。

「帰るぜー、光」
「……ベル。うん、わかった」

金髪の声に反応して、光が背を向ける。黒いワンピースがふわりと揺れて、獄寺君がいくら叫んでも、光は返事をしなかった。

「……光、何で……」

呆然と、呟く。
一瞬だけ、振り向いた光と俺の目が、合った気がした。

 
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