スクアーロはぶつくさと文句を言いながらも、一応のわかりやすい説明をしてくれた。

宵のリングを九代目から奪ったこと。
けれどリングだけがあっても意味がない、保持者である私がいないと事が始まらないこと。
ヴァリアー側には宵の守護者は存在しないこと。
また、他のリングと違って宵のリングだけは、ハーフボンゴレリングではなく既に完成されたものであること。
……ううん、リングがゲシュタルト崩壊しそうだ。

「そうとなったら、お前を拉致ってくるしかねぇだろぉ?」
「はあ……まあ、そうですね」

今のところ、宵のリングはヴァリアー邸の中で厳重に保管されているらしい。
それを私に手渡してくれる予定はもちろん無くて、これは本当に、困ったことになったなあと眉根が寄った。

「光、お前にはヴァリアー側の守護者になってもらう」

最後に、どこか疲れ気味の……そして納得のいっていないような表情で、スクアーロは私に告げた。

「あいつらに宵のリングを渡すわけにはいかねえからなぁ」

ぼそりと呟かれたのは、多分独り言で。
スクアーロはそのまま、もう一度じっくりと念を押すように「大人しくしとけよぉ」と言い残して、部屋から出て行った。


スクアーロの話を聞いて、色々と考える。
まず私は彼に名前を呼ばれた事に関して、喜んでいいんだろうか。そんな余裕が無いことくらいわかっているのだけど、やっぱり嬉しい。
……よし、喜ぶの終わり。今度こそ真面目に考えよう。考えなきゃ。

スクアーロは、私に「ヴァリアー側の守護者になってもらう」と言った。ということは、ツナ達側の守護者もいる、ってこと?いや、そうとも言い切れない、か。
それと、スクアーロの呟いた「あいつら」って、誰のことだろう。
普通に考えるとツナ達のことなんだろうけど、なんだかそんな気がしなかった。あの時のスクアーロの視線は、ツナ達に向ける慢心気味の感情が交ざった視線じゃなくて、……憎しみと言うべきか。そういうものに見えたから。
だとするとやっぱり、これからツナ側に誰か、ヴァリアーと関わりのある宵の守護者が現れるのかもしれない。

となると、私はその人と戦わなきゃいけないんだろうか。
リングが無ければ何も出来ない、私が?

「……無理、絶対無理」

ふわりと空調の風で、ワンピースの裾が揺れる。
それをなんとなく眺めながら、私は恐らく真っ青になっているだろう頬に手を当てた。
予想通りそこはひんやりとしていて、掌も冷たいものだからいっそ体温を感じない。

だいたいまず、ヴァリアー邸に連れていかれるとして、私があそこで生き延びられる気がしない。
ヴァリアー側の守護者として立つってことは、肩書きだけだとしてもヴァリアーの幹部になるってことでしょ?むりむり、ありえない。
だからこそスクアーロも納得していないような表情をしていたんだし。

黒曜編の時はただひたすらに、どうすればいいのか、どうしたいのかって悶々と考えていたけれど、今回はそれを考える余裕すら無さそうだ。
「ど、どうしよう……」って感じである。もう、狼狽えるしかない。

ああでも、ヴァリアーのみんなに会えるのは楽しみだなあなんて思う自分もいるわけで。
存外、私は落ち着けているようだった。

 
back
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -