放課後、廊下を歩いていたら爆発音やら発砲音が聞こえてきた。この前が山本の自殺事件だったから……えーっと、がんばれ私の記憶力……!
……あっ、入ファミリー試験だ。
あのなんちゃって戦争状態が校内で行われているのかと思うと頭が痛い。ここって平和なはずの日本だよね……?
雲雀さんが今見回りに出てて良かったねみんな……雲雀さんがいたら絶対咬み殺しに来てるよ。
どうしようかな、と考えるも湧き上がる好奇心には勝てず、2階の非常扉を開けて顔を覗かせる。
「ん?誰だオマエー」
「……光、ですけど…」
って何でランボいるかな!
いやいやタイミングバッチリすぎでしょ…まさかこのドアがランボにつながるドアだとは思わなかった。
身体に似合わずごっついミサイルランチャーを肩に担いでいるランボが、それごと私に身体を向けてくる。いやいやこっち見んな!うっかりででもそれを放たれたら私100%死ぬ!
焦り気味な笑顔を浮かべて、しゃがんでランボに目線を合わせる。どうにも微妙な笑顔になった気がした。
「君はこんなところで何やってるの?」
「ランボさんはねー、リボーンを殺りに来たんだよ!これはイタリアのボスが送ってくれたミサイルランチャー!」
ボヴィーノのボスも、ランボにこんなもん送るなんて何考えてんだ。まだ5歳児だよね?おかしいよね?イタリアではこれが常識なの?
「そうなんだ、まだ小さいのにすごいね」
くしゃりとランボのもふもふ頭を撫でてみれば、ランボはどこかくすぐったそうに目を細めて、きゃっきゃと笑う。
お、年相応な反応。かわいい。
「でも、それをここで使うのはいけないことなんだよ。良い男はルールを重んじるものなんだけどな、ランボさんはイイ男じゃないのかな?」
「!ランボさんはイタリア生まれのイイ男だもんね!んじゃしまうー」
「じゃー良い男のランボ君にはこれをあげよう」
がさごそとミサイルランチャーを頭の中にしまうランボを見ながら、ポケットから取り出したブドウ味の飴玉。今朝たまたまコンビニで買ったやつなんだけど、持ってて良かった。
ランボはそれにぱあぁと顔を輝かせて、目にも止まらぬスピードで飴玉を私の手から奪い取る。は、早い…。
「ランボさんこれ大好きー!」
「そっかーそれは良かったー。でも人に物を貰ったらお礼を言わなきゃね?」
「ありがとうだもんね!」
「ん、どういたしまして」
そんなことをしている間にリボーンがロケット弾を、獄寺がダイナマイトをぶっ放したらしく、私の耳には大きな爆発音とツナの絶叫が聞こえてきた。
ランボに合わせてしゃがみこんでいたため、様子は見えない。……というか見たくない。
でもまあ暫く経って全員分の声が聞こえてきたから、みんな無事なんだろう。
「それじゃあ私は帰るね。ばいばいランボ」
「ええー!まだ俺っち光と遊びたい!」
あれっ懐かれた?
がしっと足にしがみつかれて、どうしようと頬を掻く。
苦笑を浮かべながら、もう一度ランボに目線を合わせてしゃがみこんだ。
「女性を待っていてあげるのも良い男の仕事なんだよー」
「うっ……でもランボさん、光と遊びたい!」
「また今度ね。ほら、沢田君達帰っちゃうよ?私と遊んでたらお母さんの晩ご飯食べられないかも」
「ぐぴゃ!」
ママンの晩ご飯ー!と叫びながらランボは私の足から手を離して走り出した。うん、それで良いよ。
けれどいくらか走った後、ランボは私へと振り返り、ぶんぶんと両手を振ってきた。
「俺っち光のこと気に入ったから、おっきくなったら光をランボさんの正妻にしてやるもんね!」
いや、いらない。激しく遠慮。……まあまだ5歳児だし、どうせそのうち忘れるよね…。
乾いた笑い声を漏らして、私もランボにひらひらと手を振った。
「楽しみにしてるよー」
私の返答に楽しそうな、嬉しそうな笑い声を上げたランボは、ダッシュで家へと帰っていった。
……じゃ、私も帰りますか。
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