忠誠とポリアンサ
お茶は仕事の後に
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「レイニィ、本題は何ですか?」
アイスコーヒーを一口飲んで、ルーウェンは口を開く。何故レイニィは自分とお茶をしようと言ったのかわからない。
「エリカ様から見てくるように言われたのは本当のことよ。本来の目的は別だけどね」
「……新しい仕事ですか?」
「そう言ってしまえばそうね。違うと言えば違う」
少し歯切れの悪い言い方だと、ルーウェンは思う。仕事と言えば仕事だが、そうではないと言えばそうではない。自分の仕事とは別だから手伝い程度のことだろう。それでも、非番でエリカに言われたからとわざわざ来てまで言うことではない。翌日にでも言えば済む話だ。
そこから考えられることは一つだった。
「何か厄介事、ですか?」
「厄介事ではあるわね。でも、これは国が動くわ」
「国絡み?」
「ええ。情報が入ったの。ベヴァイスがこの国、リカシア王国に入国したって」
ベヴァイスとはアリスト大陸の国に仕える神子のことだ。先天的に魔法や異能を使う者、精霊の声が聞ける者や言葉などの類いを操る者がそう呼ばれている。
導術は素質あるものなら使えるがベヴァイスは威力が桁外れに大きい。そして、ベヴァイスはリカシアだけでなく、アリスト大陸に存在する国に多くに存在する。だから、ベヴァイスが国に入ったということは、色々と念頭しなければならないのだ。
「ベヴァイス本人なんですか?」
「門兵に聞けば右腕に刺青が見えたらしいわ」
「ただの刺青って可能性もあります」
「そうね。けど、大きな情報だから」
「分かっています。不確かな情報でも仕事はちゃんとしますよ」
「なら良かったわ」
レイニィはその時のルーウェンの表情を見ていなかった。
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