忠誠とポリアンサ
覚悟ある騎士の眼
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一度城に戻り、ルーウェンとレイニィは応接室に来ていた。エーデルとエリカにことの事情を話すためだ。
エリカに話す理由はあれは絶対に心配する、とレイニィが言ったからであった。
「……あ」
「ああ。また会いましたね」
「ええ。先日はありがとうございました」
エリカとエーデルは怪訝した。エリカは、初対面のはずのルーウェンとエーデルが知り合いなことに、エーデルは先日に会った時と態度が違うルーウェンに。あの時は表情を変えていた。今は無表情に、けれど真剣な目付きをしていた。
そんなことを知らないルーウェンは先程の話を切り出した。危険人物がいること。その人物が自分を狙っていること。レイニィが護衛をすること。ルーウェンがそのことを伝え終わると、エーデルは目を細めた。冷ややかで鋭い視線だ。だが、そこは女でも騎士だ。怯むことはない。
「なら、誘き出せば良いでしょう」
「だから、私が舞台で……」
「私の護衛はルーウェンに任ます」
エーデルの言葉にレイニィは溜息を吐く。面倒だ、というのが漏れている。それでも気にしないのが彼女で、悪い意味で素直なのだ。決して、自分を良く見せない。
「分かりました。エーデル様の護衛の任は騎士、ルーウェン・リートに任せます。ですが、月星祭の最中に御身が危ぶまれても、こちらは責任を負うことはできませんよ?」
エーデルは驚いたように目を見開く。ルーウェンも同じようにレイニィを見た。何を言っているんだ、とでも言うように。
ルーウェンは目の端でエーデルを見る。変わった様子はない。ただ、ふっと笑ったのだけは分かった。
「エーデル様?」
「変わった騎士ですね。良いでしょう」
「あら、意外とあっさり」
「レイニィ。それはエーデル様に失礼です」
弁解はしないの? とレイニィは苦笑混じりにルーウェンに向けて言った。
「あなたも思っている、ということですか」
「ええ、まあ。あなたは一国の王子。普通なら安全の方が良いでしょう?」
「そうですね。しかし、私はあなたを選んだ。問題はないはずですが?」
「……分かりました。私はお二人とも護ります。それで良いのでしょう? エリカ様」
「うん。ありがとう、ルーウェン」
笑みを張り付けるエリカ。
レイニィは面白いものが見れる、と笑っていた。
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