忠誠とポリアンサ
覚悟ある騎士の眼
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覚悟ある騎士の眼月星祭は他国の民が大勢やって来る。騎士たちは舞台で司会をしながら街を見張ったり、巡回しながら警備している。
しかし、舞台袖では険しい表情をした騎士がいた。
「それ本当?」
「ええ。昨日の昼、路地で女と剣を交えました」
「だとしたらまずいな」
「どうするんすか?」
「どうするも何も一つしかありません。捕まえるだけです」
ルーウェンは言いきった。息を飲むレイニィとキルアークの横でミリギアスは頷いた。ルーウェンは舞台に集まる人々を見る。黙ったままじっと見た。そして、ふっと笑った。
「私が囮になります」
「え?」
「さっきの話は私を狙ったものです。だから、通常通り舞台にいれば……」
「ルーウェンを狙って仕掛けてくる?」
「はい」
レイニィは目を細めてルーウェンの肩を掴む。本音を探るように見つめる。彼女もまた、レイニィを見つめた。
「いいわ。一度決めたら譲らないのがルーウェンだもの。けれど、囮になるなら自分の心配をしなさい。国民や観光客は私たちが護るわ。それが条件よ」
「はい」
「しかし、ルーウェン。お前、エーデル王子の護衛も勤めるんじゃなかったか?」
「ですが、野放しにしておいては王子だけでなく、祭に来ている者たちに危険がおよびます。私は舞台にずっといますので、エーデル様の護衛はレイニィに任せます」
「レイニィ先輩に? 男の方がいいんじゃないか?」
レイニィが首を振る。キルアークが首を傾げて怪訝した。ミリギアスが頷いて、ルーウェンが口を開いた。
「いくら騎士でも、男性より女性の護衛の方が油断されやすいですからね。他にも敵がいた場合、狙うには恰好の敵と言うわけです。それに……」
「男に案内されるって王子でなくても気持ちが下がるわよ」
「……」
キルアークはため息をついた。
「何です?」
「いや、そうですね、はい。じゃあ俺は通常通り、舞台周辺の警護をします」
「いえ。キルは私と一緒に舞台です。私一人では限度がありますから」
「こっちは大丈夫だ。行ってやれ」
「……はい」
ゆっくりと、幕が開かれていった。
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