忠誠とポリアンサ
緑の淡光と刃の光
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腰にかけた剣が音を立てた。


「隣国の王子の護衛するって本当なの!?」


ルーウェンはエリカに両肩を掴まれていた。表情を変えないルーウェンに対してエリカは不安に、激しい言葉で聞いていた。


「はい」

「何でルーなの?」

「陛下に聞いてください」

「ルーはそれ受けたの?」

「あまりしつこいのも嫌ですから」


ルーウェンの素直な答えにエリカは笑う。でも、と思う。


「ルーが他国の王子を護衛するってことは一緒に回れないね」

「ああ。そうですね」


今気づいた、と言わんばかりの言葉にエリカは眉をひそめた。無意識に肩を掴む手に力が入っていたのか、ルーウェンは顔を歪める。


「痛い、です」

「……あ、ごめん」

「いえ。では、そろそろ仕事に戻ります」

「うん。頑張って」

「ありがとうございます。エリカ様」


一礼し、ルーウェンはエリカの執務室を出た。扉が閉まりきるのを見たあとに呟いた。


「何も起きなきゃ良いんだけど」


杞憂に終わればいい。何も起きず、祭を楽しんで終われば、とエリカは思っていた。


◇◆◇◆◇


ユキリアは国王に言った。


「やはり、ルーウェンをエリカ様の騎士にしたのは間違いだったのでは?」

「何故そう思う。ルーウェンを近くに置くことを決めたのはエリカ自身だ」

「何故って……ルーウェンはエリカ様と身分が違います」

「貴族だったら良い、そういうことか?」


ユキリアは言葉に詰まる。そういうわけではない、と言いたいのに言えない。それは少なからず、そう思っているということだ。
国王はユキリアの考えを見抜いてか言う。


「貴族の中にも上級、中級、下級がある。その下に平民が居る。それでは聞くが、貴族と平民に違いはあるか?」

「身分が……」

「違う? どう違うと言うのだ? 同じリカシアに住む民だ。私には違いなど無いように見える。
貴族であるレイニィ・アーカリアとキルアーク・ミレストはルーウェンと上手くやっている。彼らの間に友情や恋情はあっても確執は無い。同じ民なのだよ。王族も貴族も平民も。リカシアという国の民なのだ」


食い下がる気でいるも言い返せないのは民だということに変わりはないから。
分かるか、と国王は問う。ユキリアは答えない。


「人は良いと思う統率者について来る。それだけはいつの世も変わらん。覚えておけ」

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