忠誠とポリアンサ
騎士は主と城下へ
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人通りが少なくなってから手は離されている。エリカは自分よりも低いルーウェンをたまに見る。
「……どうしました?」
「え?」
「たまに見ているでしょう?」
「あ……ううん。何でもないよ」
ルーウェンは首を傾げてエリカを見上げる。
「あー……うん。ルー」
「はい?」
「首を傾げるか上目遣い、どっちかにして」
「え?」
「……やっぱりいいや」
エリカは微笑んでルーウェンの手を握る。
「迷わないよに、ね?」
「はい」
それは同意した。理由としては道が入り組んでいるからだ。下町へ続く道に貴族外への近道。その他いろいろ、把握出来ないほど道はある。
「……エリカ様」
「何?」
「エリカ様はこの国、好きですか?」
「好きだよ? それがどうかした?」
「いえ……私も好きですから。この国が」
ルーウェンは微笑う。エリカはその笑みに違和感を感じたが、有無を言わさないようにルーウェンは言った。
「さ、雨が降る前に帰りましょう」
握られている手を握り返し、ルーウェンはエリカと歩き出す。
空には灰色の雲が浮かんでいた。
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