忠誠とポリアンサ
騎士は主と城下へ
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貴族街を通って市街地に出たルーウェンとエリカは散歩をしていた。市街地は朝から露店が並んでいる。ルーウェンは慣れた足取りで歩き、エリかは横を歩く。
「ルーウェン、あれは?」
「露店ですね。アクセサリーや小物などを扱っています。見に行かれますか?」
「見る」
ルーウェンは微笑して手を握る。
「ルー?」
「市街地は人通り多いですから」
「あ、そうだね」
「エリカ様?」
「何でもないよ」
握り返して微笑う。そうだ、これがルーウェンだ。ここにいたのがレイニィでも同じことをしているかもしれない。だから、普通なんだ。言い聞かせて少し、寂しく感じる。
「エリカ様、気分が悪いですか?」
「え?」
「人の少ない静かな喫茶店で休みますか?」
「大丈夫だよ」
「本当に?」
「うん」
「なら……いいですけど」
無関心なわりに心配性で世話焼きだった。それがルーウェンが好きな理由の一つで、自分が好きなルーウェンの一つ。それが嘘だとしても、変わらない想い。
「それより露店行こう?」
「はい」
ルーウェンの手をそっと絡めた。ルーウェンはエリカを見ると口に指を当てていた。
「ルー、今だけは呼び捨てにして?」
「それは命令、ですか?」
「違うよ。お願い」
「わかりました。……エリカ」
「ありがとう」
歩き出し、露店商を巡る。
「こんにちは」
「あら、ルーウェン。いらっしゃい」
「商品、かわいいね」
「ルーウェンの彼氏さん?」
「違います。彼は……」
「友人のエリカです」
「エリカね。友達って言ってたけど、ルーウェンって分かりづらいでしょ?」
「でも、ちょっとした表情とか、ふとした表情とかかわいいですよ」
店主は面食らってルーウェンにこっちに来いと言わんばかりに手招きした。首を傾げながら行く。
「ねえ、ルーウェン。本当に違うの?」
「はい」
「じゃあ何で手を絡めてたのよ」
「いけないことなんですか?」
「……だめだ、この娘。全く分かってない」
無関心にも程がある。エリカはルーウェンのどこに惚れているのかが分からない。好きになるのは良いことだけど、ルーウェンは分からなすぎている。
「エリカ、ルーウェンはこんなだけど、よろしく頼むわ」
「分かってます。あ、あとこれお願いします」
「まいどどうも。もしかしてルーウェンに?」
「そうです」
「独占欲、強いんですね」
「ルーは誰にも渡す気はありませんよ。誰にもね」
店主はアクセサリーを吟味しているルーウェンを哀れんだ。厄介なのに目を付けられた、と。
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