忠誠とポリアンサ
騎士は主と城下へ
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「エリカ様。ルーウェン・リートです」
「入っていいよ」
「失礼します」
「どうしたの? ルー」
「あなたがちゃんと仕事をしているか確認を」
エリカは笑って、終わったと言いながら書類を指差した。ルーウェンも笑う。
「あと、お土産にお茶菓子を」
「ありがとう、ルー」
いえいえ、と笑っていた。
「そうだ。ルー、久しぶりに剣交えない?」
「唐突ですね。現役に勝負を挑むんですか?」
「うわっ、厭味な言い方。俺が勝ったら明日一日付き合えよな」
(一人称俺って……何本気になってるんですか)
「これ命令! だからルーウェンも勝った時のことを言え」
「興味ないんで一日まとも休暇をください」
「分かった」
あれ、と思い直す。ルーウェンが一日いない状況に堪えることができるのか。
「エリカ様?」
「何でもない。それより行くぞ」
「今ですか?」
「当たり前だ」
「嫌ですよ。疲れてるのに」
「そういえば、今日休みだったよね?」
今さらですね、と言って肩を竦めた。
「騎士団も忙しいので、借り出されたんです」
だからか、とエリカは思う。エリカは自分の休みを言わない。今日のことはミリギアスが言っていたから把握してはいたが、いつ休みを貰っているのかエリカ自身は知らない。思ったのは、だからいつも一緒にいるのか、だった。
「いつも借り出されるので、休みの日も仕事なのですよ」
「疲れない?」
「騎士になった以上、覚悟の上です。それに、私は出身が出身なだけに体力がありますので。うるさいのは貴族上がりの者です」
「ああ、彼らはね」
笑って外を見た。
「……これは、一雨きますね」
「そう? すっごい晴れてるよ?」
「降ります。やるなら訓練所を使いましょう」
「疲れてるんじゃなかった?」
「ハンデですよ」
笑って言うルーウェンに思う。ルーはたまに意地が悪いと。
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