「わぁ〜、ほんとに小さくなっちゃった!」
「わーい!!ママ、ちっちゃーい!」
「千鶴もちっちゃーい!」

お礼なんてしてもらったら却って悪いと思ったけれど、こうなったら思い切り楽しむのが礼儀ってものだと思う。

「はじーにー、ありがとう!ほら、千鶴もありがとう、して」
「ありがとう!」

はじーにーはちょっと照れくさそうに頬を染めて微笑んだ。

「いや……。それで、何をして遊ぶのだ?」
「えーっと」
「うーんと」

千鶴と私は興奮で鼻息を荒くして作戦会議を開始した。





「千鶴ー!準備はいーい?」
「はーい!」
「じゃあ、ミュージックスタート!」

軽快な音楽と共にスタートしたのは題して『薄桜町ガールズコレクション』!!
積み木で作ったランウェイの上を、着せ替え人形の洋服を着て歩くファッションショーごっこだ。
千鶴の宝物であるお千ちゃん人形の服は豪華なお着物からふわふわのドレスまでバリエーションが豊富で、私も思わずちょっとセクシーな花魁の衣装を着てしまった。
お人形さんの服特有の背中のマジックテープは自分で着るとなるとなかなか難しかった。

「ママ、きれーい!」
「千鶴、可愛い〜!」

○KBみたいなブレザー風のアイドルの衣装を着た千鶴は、我が娘ながらとんでもなく可愛かった。
すっかりなりきってモデルウォークをし、ランウェイの端でポーズを決めると、観客兼カメラマン役のはじーにーが「パシャ、パシャ…」と口で効果音を言いながら(気恥ずかしいのかものすごく照れている)カメラのミニチュアで写真を撮るフリをしてくれる。

「はじーにーも ふぁっしょんしょー しよ〜!」
「お、俺はいい!…い、いいと言っているだろう!!」
「まあまあ!」

はじーにーには羽飾りのついた帽子とブーツを身につけてもらい、ふさふさのマフラーも巻いてもらえば、

「はい!長靴をはいた猫の出来あがりっ!!」
「はじーにー、にゃーっていって!」
「…に、にゃあ」

はじーにーは真っ赤になりながら、千鶴の無茶ぶりに答えてくれた。


次の遊びはお千ちゃんハウスを使ったかくれんぼ。

「も、もういいかい?」
「「まーだだよ」」

千鶴と私が隠れて、はじーにーが鬼。
お千ちゃんハウスはお嬢様のお屋敷風の家でキッチンとリビング、寝室と水回りがある。
このサイズになって見ても、壁紙や家具の飾りまでもがけっこう細かく作りこまれていて、感心してしげしげと眺めてしまい、なかなか隠れる場所が決まらない。

「もういいか?」
「「もういーよー!」」

やっと決まった私の隠れ場所は、寝室のクローゼットの中。そして、千鶴はベッドの下だ。
ひたひたとはじーにーが近付いてくる足音がして、私も千鶴も息を殺した。
あっ、千鶴!アイドル風スカートの裾がベッドのはみ出ちゃってる!

「見つけた」
「みつかっちゃったー!」
「あんたの母上はどこだ?」
「あのなか!」

んもう、千鶴、なんで教えちゃうの!?





かくれんぼを終えた私達はお腹が空いたので、ちょっと遊びを中断することにした。
一旦はじーにーに魔法を解いてもらい、元の大きさになった私がお昼ごはんを作る間、はじーにーは急須の中を掃除していた。
お箸を並べるときに覗いてみると、いつの間にか急須の中には畳が敷かれ、小さな座布団なども置かれ、なかなか快適そうなお部屋が出来あがっている。
そのお部屋の中で、はじーにーは私があげた端切れを雑巾にして、急須の内側を磨いていた。

「やっぱり茶渋落ちない?」
「うむ……だが、広さも形も申し分もない、よい急須だ」
「そう?ならよかった。さぁ、お昼にしましょう。…と言っても、はじーにー、どうやってごはん食べる?お箸の代わり、爪楊枝でなんとかなるかしら?」
「その必要はない」

そう言うとはじーにーは急須の中から這い出してきて、また「いしださんやく、いしださんやく…」と唱え始めた。
そして……


ボンッ


「「わーーーーー!!!」」
「驚かせてすまない」

申し訳なさそうに謝ったはじーにーは、私達と同じ、人間の大人の男の人の大きさに変身していた。




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