びっくりしたときの癖は私も千鶴も同じ。しばらくフリーズして声も出せないのだ。

「わ…」
「わ…」
「わ?」
「「わーーー!!!」」
「っ!?」

そして数秒後、テンションMAXの奇声を上げてしまうのも。

「大変!」
「たいへん!ママ!わたし、これ、えほんでみたことある!」
「分かる分かる!ランプの魔人でしょ!?わああ!本物だぁ!」
「っ!…だから、急須の妖精だと言っているだろう!」

ここで、大盛り上がりの私達母子(おやこ)に渋い顔で訂正した、はじーにーが語ってくれた、彼が私達の所へ来た顛末を紹介します。
はじーにーは、ある所でご主人様と仲良く暮らしていました。
けれども、ある日(というか昨日)、はじーにーに「いい加減に部屋を掃除しろ!」とお説教されたご主人様がしぶしぶ掃除を始め、はじーにーも窓拭きのお手伝いをしていたところ、一羽のカラスがぴゅーっと飛んできて、はじーにーをくちばしでかぷっと咥えて誘拐してしまったのです!
捕まってしまったはじーにーは腰の刀で抵抗……はしませんでした。
そんなことをして空から落とされでもしたら、大怪我をすると思ったからです。
はじーにーはカラスが地上に降りるのを辛抱強く待ち、どこかのゴミ捨て場(可哀想に!)に降り立つと「今だ!」と逃げ出しました。
けれども、はじーにーの不運はそこでは終わらなかったのです。
逃げ出した直後、ゴミを漁りに来ていた野良猫に捕まり、また誘拐され、そのにゃんこに海辺へと連れて来られ、やっと逃げ出したと思ったら、今度はトンビに咥えられ……と、リレー式に誘拐された末、最後に辿り着いたのがうちの庭。
そしてとしぞーのおもちゃにされていたところを千鶴に助けられた、というわけなのでした。紹介終わり。

「大変だったのね」
「はじーにー、かわいそう」

あまりに可哀想で千鶴も私も涙がぽろぽろ零れそうになった。けれども、はじーにーは淡く微笑んで、首を横に振った。

「もう過ぎたことだ。あんたたちのおかげで助かった。改めて礼を言う、ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして。それより、怪我は痛む?」
「いや、大した怪我ではない。怪我よりも、長く急須から離れていたことのほうが苦しかった。俺は急須の妖精ゆえ、急須から離れてしまうと体力が失われてしまうのだ」
「そうだったの?わぁ、なんだか○ンパンマンみたいね。『おなかがすいて力が出ないよ〜』って」
「ああ、似たようなものだ。ゆえに厚かましいのは承知でお願いしたいのだが、この急須を俺にくれないだろうか?」

はじーにーは捨てられそうな子犬のように必死な表情で頼みこむ。

「それはもちろん構わないけれど、こんな茶渋のついたのでいいの?」

私が答えると、はじーにーはパアアと顔を輝かせて「構わない」と言った。

「ありがとう。あんたたちには幾ら礼を言っても足りぬ。ゆえに言葉だけでなく、何かきちんと礼がしたいのだが」
「えー!そんなお礼なんていらないわよ!大したことはしていないのだし」
「いや、それでは俺の気がすまない。俺は急須の妖精ゆえ、何か一つあんたたちの願いを魔法で叶えさせてほしい」
「まほう!?はじーにー、まほうがつかえるの!?」
「ああ、無論だ」

魔法と聞いて、千鶴が目をきらきらと輝かせた。どうしよう?本当にお礼なんていらないのだけれど、でも逆に断り続けるのも失礼かしら?
けれど、私がウーンと悩んでいる間に、はじーにーと千鶴は話を進めてしまった。

「千鶴殿と言ったか?何か魔法で叶えて欲しい願いはないか?」
「ある!あのね、わたしもはじーにーみたいにちいさくなってあそびたいの!」
「こーら、千鶴。ごめんなさいね、無理なお願いしちゃって、気にしないで――」
「承知した」
「え!?」

千鶴が「わーい!」という歓声を上げると、はじーにーは口の中でぶつぶつと呪文を唱え始めた。
「いしださんやく、いしださんやく…」と唱えているような気がするけど…どういう意味かしら?
なんてことを考えているうちに、目の前の家具が急に膨張していった。
……ううん、違う、私の身体が小さくなっていってるんだ!
ひょえーーー!なんじゃこりゃー!?
あれよあれよという間に、私と千鶴の体ははじーにーと同じお人形さんサイズになってしまった。




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