斎「すまない…本当に。」
「いいですよー。別にぃ。」
仕事帰りに二人で良く行く居酒屋へよってから一時間。
酔っ払ってきた私は昼間に目を逸らされたことへの文句を言ってしまった。
斎「あれはその、急に笑いかけられたので驚いてしまって…。」
「一君は私が笑うと驚くの?」
斎「そっそういうわけではなく!仕事中に笑顔を向けられるとは思わなかったから…。」
「ふーん。でもこっち見てたよね?目が合ったってことは。」
斎「っ!!」
私が一君の顔を覗き込むように問いかけると図星だったのか、一瞬言葉に詰まって目の前のビールを飲み干した。
斎「… まきさんが総司と話していたから…。」
「沖田君?うん、一君とはうまくいってるかって聞かれたよ?」
斎「あいつは…。」
「もしかして、それで見ててくれたの?沖田君と話してたから?」
それってどういう気持ち?
ヤキモチ…とか?
そうだったら嬉しいななんて暢気に思っていたら一君は少しだけ伏し目がちになって呟いた。
斎「…総司と楽しそうに話していたから、その、少しだけ妬いたのだ。」
――ずきゅーーーーーんっ!!!
と、少し古いかもしれない効果音が脳内に響いた。
だって!だって一君が!!
や き も ち を!!!
やきもちをおやきに!!!
ずるいよ、本当に。
素っ気ないと思えばこうして可愛いところを見せてくるんだから!
斎「まきさん?」
「いえ、何でもないです。はい。ご馳走様です。」
斎「?もう満腹なのか?」
違います。愛が満腹です。
「でも、一君がヤキモチなんて妬いてくれるとは思わなかったなぁ。」
斎「俺も、こんなことは初めてで…。」
「嬉しい!私少しだけ寂しかったから。」
斎「寂しい?」
私は冷奴を食べながら話を続ける。
おそらく顔はにやけているんだろうな。
「デートの時はそうでもないけど会社だとそっけないから。少しでいいから恋人っぽくしたいなーなんて。…あ、でも仕事中はだめだよね。うんうん、公私混同はいけないわ。」
斎「…。」
一人で解決してしまう私を一君は黙って見ていた。
この時一君が何を考えていたかなんて酔っ払いの私は全く考えていなかったのだ。
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