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瞼の裏に感じる仄かな光にまだ起きたくないと、ベッドの横に居る彼へと抱きつこうと手を伸ばした。








―好きだから見たい世界










あれ?
伸ばした私の手にはベッドのスプリングの感覚だけで、朝から求めていた温もりは無くて。
折角の休みだからとまだ寝るつもりで目を閉じたままだった瞼を仕方なしに開けた。

『はじめ、君居ない…』

掠れた声で呟いて目覚まし時計に目をやると既に10時を回っていた。
あちゃー、どうやら寝すぎちゃったみたい。
うつ伏せになって伸びをしていると香ばしいコーヒーの匂いが微かにしてきた。
はじめ君ごはんの支度してくれちゃったんだ。慌てて起き上がると、寝室のドアを開けた。
廊下などは無くてLDKに繋がる作りだから、開けるとすぐにキッチンに立つはじめ君が視界に入った。


『はじめ君、おはよう!お休みなんだから私がやるよ』

キッチンへとパタパタ足音を鳴らして行こうとすると、手で静止を掛けたはじめ君。

「おはよう。後はコーヒーを入れるだけだ。それに休みだからこそなまえはゆっくりしていればいい。座っていろ」

『駄目だよ。はじめ君こそ休みぐらいゆっくりしなきゃ!何もしないで。最近、仕事忙しくて疲れた顔してる』

そう言った私に溜息を吐くと、パンとスクランブルエッグに野菜と果物の乗ったプレートをカウンターに置いて、「では、此れを並べてくれ」と言ったはじめ君。
呆れられちゃったかな?でも、毎日遅くまで仕事をしているはじめ君には休みの日ぐらい何もせずにゆっくりして欲しい。

『はじめ君、呆れた?』

「否、俺があんたを想うように、あんたも俺を想ってくれているのだな。なまえだって、制作で忙しかっただろ」

『でも、昨日で仕上げたから少しのんびり出来るよ。だからはじめ君は私に沢山甘えてね?』

コーヒーを持って来たはじめ君は私と自分の前に置くと、「では、遠慮なしに甘えるぞ?」と言った顔が美艶で頷くのを少し躊躇してしまった。
そんな私の動揺を気にもとめずに、手を合わせていただきますをするはじめ君に続き私も、フォークを手にとった。



「なまえ行きたい所や欲しいものはあるか?」

『ん?』

「明後日はあんたの誕生日だろう。休みは取れない故、祝うのは当日出来るが出かけるのは無理だ。だから今日はなまえが望むことは全てやろう」

誕生日の話題なんて全く出てこなかったし忙しいからきっと忘れてるのかなと少し寂しかったから、ちゃんと覚えていてくれたことに感極まってしまう。

「なまえ…?」

『はじめ君がちゃんと覚えてくれていたことに感動してるの』

「忘れる訳がない。なまえが生を受けた大切な日だ」

少し大げさな物言いに苦笑いするも、はじめ君らしいまじめな言い回しに頬が緩んでしまう。
「どうする?何がしたい?」コーヒーを置いて半身を乗り出しそう詰め寄ってくるはじめ君の目がキラキラしていた。
はじめ君って見かけによらずイベント事に張り切っちゃうタイプなのかな。
遣りたいこと…と言ったらアレしかないんだよね。
でも、自分からなんて言い出せないし常日頃から彼の肉体を見るたびに想っていること。この機会を逃したらきっと、いつまでも言えない。でも、恥ずかしいし…

「なまえ、何かあるなら言ってみろ」

『え?』

「あんたの顔を見ていれば分かる。決まっているのだろ?」

『…う、うーん…』

真っ直ぐな濃蒼の瞳に見つめられたら私の心の中まで見透かされてしまいそうで視線を逸らすと「なまえ」と少し低く呼ばれてしまった。
此れは、観念して言うしかないようです。

『裸…』

「はだか?」

意を決し言葉に出すと見つめてくる瞳が怪訝そうな色を宿した。
怯んじゃだめだ、一気に言うのよ、自分!

『はじめ君の裸をデッサンしたいっ!』

言ったよ!やったよ自分!ずっと思っていても口に出せなかった事!
勢い良く叫んで、心の中でガッツポーズをしていると、ぽかーん顔のはじめ君。
あれ、こんな顔あまり見れないレアものじゃないか。でも、ぽかんさせてしまったのは私のお願いでして。

『い、嫌ならいいの。でも、ずっとはじめ君の裸デッサンしたいなって…おもっていて…』

語尾は段々小さくなってしまう私に「承知した」とだけ口にして、スクランブルエッグを口に運んだ。あ…口に入らず落としてる。
やっぱり恥ずかしいかな…でも、いいって言ってくれたし!いいよね!口に出してしまえば、芸術家魂に火がついてしまって、メラメラ湧いてくるやる気に朝食を一気に掻き込んだ。




「こ、こうか…」

『うーん…はじめ君大事な部分隠さないで』

「…」

『そうだなー、片方だけ立ち膝にしてもらおうかな』

「しょ、しょ、承知した」

はじめ君が、恥ずかしがるから下はボクサーパンツを履いている。
恥ずかしがろうがスイッチの入っている私は彼の大事な部分が見えていようが気にしないのに。
だって、均等に程よく付いた筋肉の筋が綺麗だし、立膝を片方だけしているからその横から半分だけ見える腹筋の筋!!!
はああ!悶える!やっぱり彼の肉体は群を抜くものなんだわ。

ダイニングテーブルの横に、椅子を出してそこに片膝を立てて座る一君の前に椅子を移動して座る私。

はじめ君の頬に赤みが差していようが緊張で固まっていようが気にせず目の前のスケッチブックに彼を描くことに没頭した。


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