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『できたっ!はじめ君出来たよ!』

出来たばかりのデッサンを見下ろして、ほおっと見惚れてしまった。
自分の描いたものだけど、とてもいい身体をしたはじめ君がこちらを見ているんだもん。
か、格好いい…

はじめ君と呼ぼうと顔を上げるといつの間にか席を立って私の椅子の前に膝立ちになっていた。

『はっ!はじめ君、な、何?』

一気に体中が熱くなるのも、声が上ずってしまうのも仕方ないと思う。
…だって、私のシャツの釦を器用に外してもう既にシャツの隙間からブラが見えてしまっているんだから。

『はじめくんってば!』

「今度は俺がなまえを描く」

『へ?』

「描くのは下手だが…同じ世界が一度見てみたかった。なまえの全てを知りたい。決して見せられるものでは無いが…いいだろうか」

私と同じ世界が見たいなんて思っていてくれたことに吃驚した。
美術館にデートに行ったり、勿論私の展示会や作品が出来ればアトリエに来てもらったりして芸術には触れてきたはじめ君だけど。
自分から鉛筆を持つことなんてしなかったから。
はじめ君が初めて口にした私の世界に寄り添ってくれる言葉に、頷く以外の答えなんて無かった。

そして、あれよあれよと脱がされて下は履いているけど、上はブラジャーだけになった私は自分がモデルになる経験は初めてで落ち着かない気持ちで視線を彷徨わせていた。
でもスケッチブックから視線を上げて此方を見つめるはじめ君の瞳が、見たことが無いぐらいに真剣で私も恥ずかしがっていては失礼だと背筋を伸ばした。

どれ程そうしていただろう…
ふうっと息を吐き出して、手に持っていた鉛筆を斜め後ろのローテーブルへと置いたので、近くまで寄ると「どうだろうか」と戸惑った様子のはじめ君。

『うん、うん、描きたいって気持ちが全面に出てていいよ!情熱的』

決して上手とはいい難いけど、絵は上手い下手じゃなくて、心で描くものだ。
はじめ君が私を描きたいと思って描いたことに意味がある。
スケッチブックへと手を伸ばすと触れた指先にはじめ君の肩が揺れた。

「冷たい」

『へ?』

「裸だった故冷えてしまったようだ。風邪を引いては困る。風呂に入るぞ」

そう言って私の手を掴んでずんずんお風呂場へと歩いていってしまう。
確かに暑くは無い今の季節だけれど、冷えて風邪を引くような陽気でもない。
たまたま手が冷たくなってしまっただけだと思うんだけど…

「なまえも脱げ」

『え!はじめ君も入るの?』

「何か不都合があるのか」

『不都合は…ないけど』

私がそう言うと、どんどん脱いでいってしまうはじめ君に目のやり場が困ってしまう。
そりゃ、なんども肌を重ねたし今更恥ずかしがる間柄でも無いんだけど。
お風呂だけはユニットバスと言うのもあって入ったことが無かった。
考えを巡らせてこれから狭いユニットバスで…は、はじめ君の肌を拝めると思うとのぼせ上がっちゃうのは目に見えている。
もじもじと一向に脱がない私に近づいたはじめ君は既に、素っ裸…。
はじめ君っ!そんな積極的キャラじゃないはずなのに!
フワッと抱きしめられたかと思ったら、ぷちっと締め付けられていた胸の圧迫が取れて、ブラが浮いた。

『はっ!!はじめくーん!』

「もたもたしているなら俺が脱がせてやる」

『い、いい!自分で脱げますからっ!だから先はいっててね!ねっ?』

背中を押して無理矢理お風呂へと押し込んだ。
はじめ君がいなくなって広くなった脱衣場で腕を組んで考えてみたけど…これ、白を切って入らなかったら後で怖いし…。
もう選択肢は入る!しか無いんですね。そうなんですね…腹を括って下に履いている物を脱ぎ去って、肩に掛かっただけのブラを脱ぎ捨てた。
よっし!待ってろはじめ!
そう心の中で勢いよく言って開けると、湯気で充満した空間に、頭からシャワーを浴びているはじめ君…
しなやかな背筋が頭を擦るのに腕を動かす度にいい具合に、筋肉が動いて…
ぐはっ…だっ、駄目!色っぽすぎる…

普段目にしないシャワーを浴びるはじめ君の美艶な姿に尻込みして、一歩後ずさろうとした私の腕を取って「早くしろ」と一瞥をくれたはじめ君の瞳がまたなんとも…
熱を孕んでいるっていうのか、厭らしいよ、はじめ君。
もじもじしているのは私だけで、引っ張られて浴槽に入ると、頭からジャーっとシャワーを掛けられてしまった。

『あっぷ。きゅ、急に』

「今日は、スケッチさせてくれた礼に俺が洗おう」

そう言うと、ゴシゴシ頭を洗ってくれてその手付きとシャンプーのいい匂いで自然と瞼が落ちてくる。人に洗ってもらうのってこんなにキモチイイんだ。
頭が終わったと思って有難うと振り返ろうとして、後ろから伸びてきた石鹸を付けた手が胸を!

『ぁっ…そっ、そこは…自分で洗える』

「俺が洗うと先程言ったばかりだが」

『で、でもっ!』

「身体は喜んで居るようだ。立ってきた」

なっ、なんてことを言っているの!

スイッチ?が入ってしまったはじめ君はもう誰にも止められませんでした。




(もう!はじめ君とはお風呂入らない)

(…沢山甘えていいと言ったではないか。一度風呂に一緒に入ってみたかったのだ)

(…もう。顔真っ赤だよ。はじめ君)


―終―


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