新八パパの苦悩(新八/家族パロ)

▼ホワイトデー


新八パパの苦悩(新八/家族パロ)

「新八さん、折角のお休みなのにいいんですか?」

「折角の休みだからこそ、だろ?」

「そうですね」


にこりと微笑むと、暖かくなるような笑顔をくれた旦那様に心が満たされて幸せ。

今日は比較的暖かくて、こうして新八さんと近所の土手をちさと手を繋いで三人で歩く事に頬を緩ませた。


「新八さん、擽ったいよ」

「ん?だってよなまえの手、気持ちいいんだもんなスベスベで」

繋いでいる手の甲を、ごつごつして少しかさついた親指の先で撫でるのが彼の癖なんだ。
大事そうに触る優しい手付きに、心まで擽ったくなっちゃうと撫でられている手を見て、目尻を緩めた。

私の隣には新八さんで…

きっと子供は両親の間で、二人と手を繋ぎたがる筈だが、「ぱぱ、あっち」と私の向こうを指差した次女に手を繋ぐ事を否定された新八さん。

あまりに小さく見えた身体が可哀想で、代わりに私がその大きな手を握ると曇っていた顔を綻ばせてニカッと大きな口で笑ったんだ。

本当に、可愛い人。

体格は良くて私より四つも年上の彼に可愛いなんて可笑しいかもしれないけど…

娘に邪険に扱われて落ち込む新八さんを慰めて、元気を取り戻してくれることが嬉しかったりする。

しゅんと、大きな体を小さくして落ち込む彼が私の慰めた言葉や行動で笑顔になってくれるのが、なんだか小さな幸せ。


「二時だろ、こんなゆっくり歩いてて間に合うか?」

『大丈夫ですよー、ちさの歩くスピードを考えて家を出ていますから』

相変わらずマイペースなちさの歩く速度に合わせて歩いていると時間の流れを忘れてしまう。


暫くゆっくり歩いていくと、長女が通う幼稚園が見えてきた。
クラスの前で引き取る為に並ぶお母さんの列に三人で並んで順番を待っているとはるかが他の子たちと出てきた。

「あっ!ぱぱもだっ」

嬉しそうに顔を綻ばせた娘に、嬉しそうに頬をだらしなく緩めた新八さんは、大きな手を振っている。

「ふふふ。嬉しそうですね、はるか」と、隣の新八さんに視線を向けると彼の後ろに、人差し指を口の前に一本立てて、”しーっ!”と楽しそうにウィンクをしている…

藤堂さんちの平ちゃんのパパ。

あっという間に膝カックンをされてよろけた新八さん。

あっ、そっちに重心かけてましたもんね…

小学生みたいな悪戯をする平ちゃんのパパに苦笑いした。
いつもなら気配で気づく新八さんも、娘の嬉しそうな顔にデレちゃってそれ所では無かったみたい。

「だぁっ!へいすけぇぇ〜っ!」

「わぁっ、しんぱっつぁんっ!い…いででっ。ギブっ、ギブ」


筋肉隆々の逞しい腕をバシバシ叩くけど、びくともしない新八さんの腕に顔を歪めている平ちゃんのパパ。

「ぱぱ!みっともねぇからやめろよ」

「そうだよっ、ぱぱもやめて?へいちゃんぱぱかわいそう!」

「「…」」

新八さんとじゃれている、昔馴染みの藤堂平助さん……の息子の平太君こと、平ちゃんと私たちの娘のはるかが白い目で二人を見て各々に止めに入った。

幼稚園で、バカ騒ぎは迷惑だし…目立つから恥ずかしい。

ほら…よそのお母さん方が見てきてるじゃない。

毎回こんなだから、二人のやり取りが面白いやらイケメンのぱぱで羨ましいやら…

注目の的なんですよ。

平ちゃんのパパは、人なっこい笑顔に小柄だけど顔は整っているし、新八さんだってガサツで女心こそ心得ていないけど…
鍛えられた身体に、顔はキレイ系じゃないけど、ガテン系でいい男だと思う。

幼い二人に止めれて罰が悪そうに、離れる二人。
ふふ。二人して、子供に叱られてしょんぼりしちゃって。
どっちが子供か分からないと微笑ましく見ていると、「あっ!」と何かを思い出した様な声を上げた平ちゃんのパパ。


「平太、これこれっ!」

「あっ、ぱぱ!わすれなかったんだ!ありがとうっ」

平ちゃんパパが、手に持っていた小さな紙袋を平ちゃんの目線に屈んで渡しているのを横目に、ちさを抱っこして新八さんに近づいた。

「新八さん、幼稚園なんですから押さえてね?私は見慣れてますけど…園児が吃驚してしまいます」

"つい…ごめんな"と、本当にすまなそうな顔をする彼に、他のお母さんに格好いいと言われている新八さんに注目を浴びてほしくないと思ってしまったの。

注目を浴びれば、必然的に見られる訳で…
見られたくないと旦那さんになった今でも嫉妬しちゃうなんて可笑しい。

素直に私の横で小さくなる新八さんに罪悪感が沸くけど。


「いいの?」と遠慮がちにに言うはるかのもじもじと恥ずかしそうな声に首を傾げて視線を下に向けると、その小さな手には、平ちゃんのパパが持っていた小さな紙袋があって…

「おう」

「ありがとう!へいちゃん」

「いいって!けっこんするんだから、あたりまえだよっ!」

そう言う平ちゃんの声に嬉しそうに「うん」と言う娘…

二人とも、頬を真っ赤にして恥ずかしそうに笑い合っている。

あぁ、今日はホワイトデーだから、と納得している私の視界に入ったモノにゾッとした。

凄まじい落胆の色を隠せずに目を潤ませている新八さんがワナワナと身体を震わせていて…

平ちゃんのパパは、ニカッと笑ってよくやったっ!なんて頭を撫でている。

いやだっ、新八さんっ。

み、みんな避難して〜っ!

「ほ、ほ、ほらっ!二人とも園庭で遊んできなさい」

子供たちに駆け寄ると、バッグと紙袋を受けとって駆けていく二人の背にホッと胸を撫で下ろした。

それから、後ろの平ちゃんのパパに逃げてと言おうとした矢先に、「うぎゃっ」と潰れた様な音がして後ろを振り向くとスリーパーホールドを平ちゃんパパに喰らわしている新八さん。

あちゃぁ…

「ぐっ、ぐ、る"、しぃー!」

「し、新八さんっ!平ちゃんパパ、落ちちゃうよっ!離してあげて」

「はるかに平助をお義父さんなんて言わせるわけにはいかねぇんだ」

「もう、気が早いっ!そんなこと言ってるとはるかにも、パパなんてキライって言われちゃいますよっ!?」

この言葉が効いたようで、力が抜けた手からズルズルとしゃがんだ平ちゃんパパ。
慌てて背中を擦って抗議の声をかけようと、新八さんを仰ぎ見た私は、その光景に笑うしかなくなってしまった。

今にも泣きだしそうな顔をして嫌がる次女を抱き締めながら「俺にはちさしかいねぇ」と慰められようとしているんだもん。
今はパパがキライな時期の次女に慰めてもらおうなんて、結婚と言う言葉が相当ショックだったようだ。

平ちゃんパパがのそりと立ち上がったる気配に目を向けると苦笑いの彼と目があった。

「娘のことになると手加減なしなんだからよ」

「本当です…すみません」

「なまえが悪いわけじゃねぇんだし、謝るなって。それに、しんぱっつぁんにプロレス技を掛けられるなんて慣れてるしなっ!」

大丈夫だとアピールしたかったのか、ドンと胸を叩くと、小さく咳き込んだ平ちゃんパパは次女にも逃げられて肩を落としている新八さんの背をドンと叩いた。

「ほらっ、子供はいずれは巣立つんだ。やけ酒なら付き合ってやるぞ?左之さんも誘って一杯やろうぜ」

「へーいーすーけぇ」

平ちゃんパパより大きな身体で抱きついた新八さんに「やめろよっ、気持ちわりぃよっ!」と抗議の声を上げてじたばたしているけど、その顔は満更でもなさそう。

本当に仲が良いんだから。

くすくす笑った私の足にしがみついているちさの小さな頭を撫でながら平和だなぁと頬を綻ばせたのだった。



―fin―


(あとがき)

新八さん…どうでしたでしょうか?

やはり、ギャグちっくになってしまいましたw

長女が好きなバレンタインにチョコを渡した、平ちゃんとは同じ幼稚園に通う平助の子供だったんです。

バレンタインver.の時に、長女ちゃんが好きな子の絵を書いた時に考えつきました。
平助の息子に恋をしたら、益々新八さんは落胆するだろうと…
でも、彼らが親族になったらきっと楽しそうだとおもうんですよね!
結婚式とか、絶対騒がしそう。
法事ですら騒がしそうと妄想が膨らみ苦笑いです。

お次は原田さん→







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