チョコの大きさじゃない!(新八/家族パロ)

▼バレンタイン


チョコの大きさじゃない!(新八/家族パロ)

「ただいまぁー!あー腹へったぁ」

『おかえりなさい、新八さん』

キャベツを千切りにしている手を休めてドアから入ってきた新八さんを見てにこりと微笑んだ。

「あぁ」と、赤のニッカポッカに似合う眩しい笑顔の、旦那様に愛しい気持ちが溢れる。
大工さんの彼は、筋肉隆々で男らしい性格だ。
昔馴染みの友達には暑苦しいとか弄られキャラだけど、そこもまた可愛いと思う。


『新八さんお風呂わいてるよ』

「あぁ、はるか!入るぞ」

「はーい!」

ダイニングテーブルでお絵描きをしていた上の子はるかは、ピョンっと椅子から降りて新八さんの手を握り部屋から出ていった。

結婚6年の私たちだけど、優しい新八さんとは未だにラブラブだ。
可愛い娘達にも恵まれて、幸せだし、少し女心が分からないところも新八さんの良さと言ったら良さだろう。



暫くして、上の娘とお風呂から出てきた新八さん。
その大きな身体を揺らしてリビングの一角にあるコルクマットの上で、おままごとをしている下の二歳を過ぎた娘の近くに座った。

「ちさ、おままごとか?父ちゃんと遊ぼう!」

新八さんはパパって柄じゃないから一生懸命、父ちゃんと呼ばせようとしてるけど何故か、パパで定着してしまっていた。
胡座を掻いた上に、軽々とひょいっと乗せると頭をガシガシ撫でた。

あー、伸びてきて薄いながらも二つに可愛く結わいてあげた髪の毛がボサボサ…
だから女心が分からないって言われちゃうんですよ。

大きい新八さんが抱っこすると小さいちさが益々小さく見えるから可笑しい。
愛しそうに目を細めて、頬擦りをし出す姿に苦笑いした。

あ〜〜…

全力でするから…

「ぱぱ、ちらい!あっち」

と、リビングのドアを小さな指で差されてしまう。
肩を落とす新八さんの落胆ぶりに、些か不憫になってしまった。
ネットで調べたら、うちのように急にパパ嫌いが発症して大きくなると治ると言うお家が意外に多いようだ。
特に女の子に多いのかネットの質問に答えている人は娘を持つ親が目立っていた。

みんな必ずあるものでは無いが、うちも例外ではなく、五歳の上の娘も最近まであったのだ…
パパを毛嫌いする傾向が…
折角最近、パパ好き!とニコニコするように変わったのに、下の子も同じ道を辿るのかと嘆く新八さんの姿に笑ってしまった。

肩を落としてダイニングテーブルでお絵描きをしている、上の娘に擦り寄っているのをご飯の支度をしながら眺めて幸せだなぁと目元を緩めた。
下の娘に冷たくあしらわれた時は、こうやって上の娘に慰めてもらうのが彼なりの悲しい心の慰め方らしい。
娘に慰めてもらう大きな新八さんが、一番子供みたいだと目尻が下がった。

『ご飯もうすぐ出来るから、お絵描きお片付けしてね?』

「うんっ!」

「お、いい返事だな!いい子だぞ、はるか」

新八さんに優しく頭を撫でられてニコニコする娘の目の前にある紙を覗き込んで、じっくり絵を見て頬を緩めた。

「この、可愛いリボンを着けたのは、はるかだな?」

「うんっ!そうだよ」

揚げたカツをお皿に盛り付けながらカウンター越しに覗くと、お絵描き帳に描かれた絵には、はるかだと言うリボンを頭につけたスカートを履いた女の子…
その隣の、男の子と手を繋いでいる。

その男の子を指差して、頭をガシガシ掻いた新八さん……

あー!ダメッ!その男の子は…っ!

「父ちゃんは、随分小さくなったなぁ?はるかとおんなじだ!」

嬉しそうな新八さんに、満面の笑みのはるかが首を横に振った。

「ちがうよ、パパ!それはようちえんの、へいちゃん!」

目を見開き固まってしまった…

あーぁ…

最近になって好きな男の子ができた事をまだ知らなかったんだよねぇ。
あちゃー、紙を持ちながら新八さん涙目になっちゃった……

どんな男か連れてこい!
俺と力比べして勝たなきゃ娘はやれん!

……とか言いそう。
それで結婚式は、絶対号泣だろう。
将来の娘を送り出す新八さんが簡単に想像できて、小さく笑った私は、お盆に乗せたご飯を運ぶのだった。


夕飯も済ませて、片付け終わった私は、ソファーで座る新八さんの隣へと座った。
娘達は横のコルクマットの上でブロックをしていた。
はるかの作ったものを壊しにかかるちさ…軽く揉めているけどいつの間にまた仲良く遊び出すから不思議だ。

「なまえあれってもしかして…」

テレビのラックの上の、可愛くラッピングしたものに気づいたのか隣に座った私に目を潤ませている。

『あれ…幼稚園の好きな子にだそうです』

でもね、と言う私の言葉など聞こえていないほどの落胆ぶりに慌ててはるかを呼んだ。

『はるか、パパにチョコ作ったのあげないの?』

「あっ!ちょっと待ってて〜〜」


そう言って、嬉しそうにパタパタとキッチンに消えた娘に目尻が緩む。

暫くすると、にこにこ笑って戻って来たはるかは、新八さんの膝の上によじ登った。
手には、ハート型のピンクの銀紙に流し込んだ小さなチョコ。

「はるか〜〜!」

「あーぱぱ、くるしいよ!」

力強く抱き締めた新八さんに苦しそうにしながらも嬉しそうなはるかは、暫くするとちさとブロックをするために膝の上から降りていった。

横の新八さんを見ると何やら浮かない顔でブツブツ言っている。

耳を口元に近づけると「一粒…」と聞こえた。

『新八さん、一粒って?』

首を傾げた私に、情けない顔で擦り寄ってきた彼の腕が腰に巻かれる。

『好きな男には、ラッピングまでしてクッキーには"すき"って書いてあったのに』


好きな男って…
園児にやきもちを妬く新八さんに眉尻を下げた。
男親は、娘が可愛くて仕方ないって言うけど。
またまた大きな肩を落とした新八さんにいい子いい子と頭を撫でてあげて口を開こうとすると、ガバッと見上げた眩しい笑顔を向けて私より先に口を開いた。

「なまえ!今日から手加減なしだ!」

『えっ?何が?』

「息子を作ろう!味方が欲しい!」


見方って。
確かに、女ばっかで肩身は狭くなる一方かもしれないけど。
それに、手加減無しで毎日なのに今以上どうするのか…
考えただけで身体がもたないよ。
名案だとばかりにキラキラした顔で見上げてくる新八さんを苦笑いして見下ろすと、額に口付けた。
目を見張って真っ赤になった新八さんに、未だにこんなに照れてくれるなんて嬉しくて仕方ないと、頬を綻ばせて口を開いた。


『パパは体が大きいから、おっきいハートのチョコをあげるって張り切っていたんですよ。でも、大きさが其しかなくて落ち込んでました。大好きなパパがお腹ぺこぺこになっちゃうって』

"ちゃんと、パパの事見てるんですね、大好きだから"と言ってあげると、みるみるうちに目元が緩みニカッと白い歯を出して笑った。


『新八さん、娘達ばかりじゃなくて私の事も見てくださいね?』

そう言って、腰に巻きついている新八さんに屈んでチュッと唇に軽く口付けた。

傍らで、娘達が「ぱぱとまま、ちゅーしたぁ!」と楽しそうにはしゃいでいるのを、顔を見合わせて笑った。


永倉家は今日も幸せです。




−fin−

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