snoitoved

雪下のメモ帳 - update : 2019.05.05
サイトとは別に詳細設定や謎時間軸の話なんかをのせるところ


三輪秀次と伏見柊

「三輪先輩」
「…なんだ」

会議室から訓練室へ向かう途中、伏見に声をかけられた。振り向くとそいつは紙袋を此方に軽く差し出していた。入っているのはゼリーとスポーツ飲料、後は恐らく痛み止めの類いだ。

「迅さんからの預かりものです」
「俺がそいつの名前を聞いた後に貰うと言うとでも思ったのか」
「いえ、ただの確認です」

そう言うと伏見は近くの自販機の隣に置いてあるゴミ箱の中に袋ごと突っ込んだ。こいつ、預かったものを軽々と捨てたりできるんだな。様子を見ていると伏見はなんでしょう、と俺に視線を戻した。

「私もあの人もこうなると分かっていて聞いただけのことです」

最初から捨てても良かったんですが。悪怯れる様子もない伏見にそれなら始めから俺に聞くなというのは恐らく意味がないだろう。あいつに似た立ち振舞いだ。相手の是非に関わらずまずは形式的な行動を取ろうとしてくる態度。はっきり言って迷惑だ。

「これから任務でしたね」
「それが何だ」
「いえ、引き留めて申し訳ありませんでした」

そう言うと伏見は俺を見送るかの様に一歩後ろに下がって軽く会釈をした。俺が再び進行方向へつま先を向けると、後ろでカッ、と響く音が段々離れていく。振り返ることをせずにそのまま訓練室へ戻ったが、今日の彼奴も気味が悪かったことだけは確かだ。人殺しに躊躇の無い奴は何を考えているか分からない。分かりたくもない。

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