「んぁ………んんん…」
ぼんやりと目を開く。
カーテンの隙間から光がこぼれている。
時計の針は5を指しているようなので、もう少し寝てやることにした。
「ねむ…ん…」
温かい布団が心地好い。
再び眠りに落ちるのは容易かった。
しかし何やらばたばたと足音が聞こえる。
まだ早いのだからもう少し静かにしてほしいと眉間にシワを寄せたその時。
「おい嬢ちゃんいい加減起きた方がいいぞ、もう昼飯の時間だ」
「ふあ?んぇ?そんな…まだ5時…ご……、?!」
再度時計を確認すれば、針は間違いなく5を指していたのだが、それは分針であり実際の時間は11時25分。
慌てて飛び起きる。どう考えても真昼だ。
「あっ、うぇっ?え?!ランサー今何曜日じゃ?!」
「土曜日。こんな明るいのに5時なわきゃ…って」
「じゃあいいやおやすみ」
土曜日ならなんということはない、予定も無いのでもっと寝てやろう腹いせに。
ランサーが何か言ってるけどとにかく眠い。すごく眠い。
「おーーーい嬢ちゃん起きろーーー」
「やだぁー私は眠いんだぁー…あと一時間…んぐぅ…」
「ったく…仕方ねえヤツだなぁ…」
ランサーはため息を漏らしながらこちらに歩み寄り、勢いよく布団を剥がしに掛かった。
「やぁーーランサーのえっちぃーー…うわさむっ」
「ほら起きろ、身体冷えねえうちにさっさと着替えとけ」
昼飯好きなもの作ってやるから、とランサーが言うので仕方なく着替えて起きることにした。
あとその布団早く返してほしい。
さむい。
私の桃源郷を返してくれ。
そんな私の視線を感じたのかランサーはまたため息をつく。
「…嬢ちゃん布団返したら寝ちまうだろ」
「うぐっ」
それもそうだ。
お布団の魔力には勝てない。
お布団の持つ魔力は、この世のどんな魔術師よりも強いのだ。
仕方なくベッドから降りてよたよたとクローゼットへ向かう。
そのうちにランサーは布団をベッドへ戻してくれていた。
「着替えるから出てってー」
「あいよ…っと、その前に」
「?」
振り向くとそこにはランサーの紅い瞳。
額にちゅっと小さくリップ音を立ててキスが落とされる。
「おそようさん、瑠衣」
「…おそよ、…ランサー」
今日も平和な一日が始まった。
ちなみにお昼はホットケーキをリクエストした。
そんなん昼飯になんねーよとボヤかれたけど、なんやかんやしっかりと作ってくれる。
そんなところも、好き、なんだろうなぁ…
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いっぽんめ。
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