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「#幼馴染」のBL小説を読む
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※なんか暗い




喉から絞り出される嫌悪。


『嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だいや、いやだいやだいやだ助けて嫌だぁっ…!!!!』


何度も何度も、悲鳴を上げる。
何が嫌なのか、私にもわからない。
わからない。
しかし嫌なモノは嫌なのだ。

視界も思考も不明瞭。
霧の中でひたすら叫ぶ。
声が枯れて、喉が擦り切れて、血を吐こうとも、私は叫び続けた。

何がそんなに嫌なのか、今の私にはわからない。


身体が大きく揺れる。
地震なのか、自身が震えているのか、目眩を起こしているのか、世界がまわっているのか。
なにも、私には。



「…、瑠衣、瑠衣!!!!」



「ッ…!!!」

「…目を、覚ましたか、瑠衣…」

「……?、…ぁ、???」

言峰だ。
黒くて大きくて分厚いあの人。
何やら肩にえらい圧力を感じる。

ああ、言峰だ。

「大丈夫か?酷く魘されていた様だが」

「…だい、じょ、……ぅあ」

大丈夫じゃ、ない。
身体はあちこち謎の痛みを訴えているし、嫌な汗で全身がじっとりとしているしで。
おまけに訳のわからない嗚咽により喉がギリギリと窮屈なままだ。

「…みね、言峰ぇ……ぁぅ、うっ、あ…」

「……大丈夫だ」

言峰とは思えない程に優しくて暖かい声にあやされる。

「…ぃに、ころ、…れっ、…ゃ、だっ、ぅっ、ぁ」

「瑠衣、」

壊れ物に触れるかのように、愛しいものに触れるように、そっと、しかし力強く抱きながら。
赤子をあやすかのようにトントンと背中を撫ぜられる。

「ぅぐ…っ、ひ、…みね、…が、ぃに…っう」

「大丈夫だ」

トントン、トントン

ゆっくりと、鼓動に合わせて。
己には亡い、鼓動を刻むかのように。

他人の傷を開くことに特化した言峰だからこそ、適切に、傷を癒す事ができるのだ。
心臓は亡くとも、心は其処にある。
そうやって、何度も助けられてきた。

だから。
道徳を知り尽くしている彼が、己の心の底から理解出来なかった事があろうとも。
愛を知ることが出来なかったとしても。

出来ることならば私が、言峰を。

「…ぁふ……、…ふぅ…」

「…落ち着いたか」

「…すこし」

「そうか」

叶わなかったその事を。

「…言峰に、しか、あげたくない」

「わかっているとも」

ちゅ、と左手薬指にキスが落とされる。

私は貴方に全てを捧げます。
貴方以外には決して渡しません。

「わたし、の、最期は、」

「ああ」

「絶対に、だよ」

「幾度でも誓おう」



貴方にだけ、この一度きりの命を捧げます。




8/6
死を以て愛を誓う


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