神崎瑠衣は気になっていた。
月の聖杯戦争に参加してからというものの、完成品の礼装が数多く存在し、またそれらの完成度はとても高いものであった。
完成度の高いプログラムというものは最早芸術の域。
ハッカー側としては少々厄介な物になることもあるが、プログラマーとしては感動せざるを得ない。
見たい。
これらの中身が見たい。
きっとため息が出るような美しい術式が組まれているのだろう。
今は使用していない、序盤ではとてもお世話になった鳳凰のマフラーを見つめ、想いを馳せる。
「マスター。基本、逆アセンブルは御法度なのだろう?やめておきたまえ」
「わかっている。それでも気になるものは気になる。アーチャーが掃除機を分解したいのと同じ感覚…って言えばわかる?」
厳密に言うと少し異なってくるのだが、喩えとしてはまあそんなものだろう。
プログラムの動き、結果を確認し、ソースを読み取る。
尤も、完全なソースコードの再現は出来ないのだが…これでも私は月の聖杯戦争に参加した身だ。
それぐらいやってのけずに生き残れるものか。
それに、セラフなら礼装の解析くらい見逃してくれるだろう。
月の聖杯戦争ではその程度のことは当たり前に行われているし、禁じられてもいない。
「まったく、君の探求心は素晴らしいものだが少々度が過ぎる」
「アーチャーは黙ってそこのボールペンでも解体してたらいいよ」
「今日の君は随分とまた冷たいな」
両手を上げやれやれと肩を竦めるアーチャー。
その動きも見慣れたものだ。
技術者として。
ハッカーとして。
マスターとして。
更なる高みを目指すため、そしてアーチャーと先に進むため、今日も夕方までコードの解析に勤しむのであった。
6/27
ボールペンの解体など素人でも1分掛からない
7/3
口調微修正
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