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「#幼馴染」のBL小説を読む
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なんとなく。
久しぶりにお酒が飲みたかった。
私はそんなにアルコールに強い方ではない。
そんなわけで適当な缶チューハイを調達し、いつものように言峰の部屋で缶を開けた。
…いつものようにというのは、何故だろうか、いつのまにかここで過ごすのが常になっていたというか…まあそれなりに快適だし…?

アルコール度数は低めの3。
私が楽しむ分にはこれで十分なのだ。
むしろ強いのは勘弁していただきたい。
繰り返すが私はそんなにアルコールに強くない方であって。

「なんだ酒盛りか瑠衣!何故我を呼ばぬ!」

…まあ、言峰の部屋だから遭遇することは予想できていた。

「いや、酒盛りなんて大層なものは」

言いかけた所で缶をひったくられた。
いきなりなにするんじゃ。

「ほとんどジュースではないか」

一口煽り、即返却。
どうやら英雄王のお口には合わなかったようだ。
まあ安酒ですし。
お値段だいたい120円。だいたい。
庶民は庶民らしく庶民するのだ。

ギルガメッシュはむう、と一度唸って踵を返す。
そしてそのまま部屋を物色し始めたのだ。

出るわ出るわ数々のワイン。
言峰の部屋にこんな数のワインが隠されていたとは知らなんだ。
いや、格別隠していたという訳では無さそうだが、素人目で見てもそれらがお高いものだと見てとれた。

「まあ飲め」

「…これギルの?」

「言峰のものだ」

「………ですよねぇ…」

そろそろこの流れにも慣れた。
しかし。

「気持ちは嬉しいけど、私ワインはあまり…赤は特に渋みが」

「そうか…渋みが強いものは苦手か。ならばこちらのワインなら飲めよう。我手ずから選んでやったのだ、ありがたく飲むがよい」

驚いた。
あのギルガメッシュが気遣いというものを知っていたとは。
ワインは度数が強く基本的には飲まないのだが、たまには飲んでみてもいいかもしれない。

「…じゃあ、少しだけ」

くい、と一口。
香りがどうだとかこうだとか、ワインの楽しみ方なぞ知らない。

確かに渋みは少なかった。
味としては今まで口にしてきたものの中ではかなり優しい味のような気がした。
味は優しい。味は。

「う、けほっ、」

「どうした、気道にでもはいったか」

「や、そうじゃないんだけど、ちょっと…強い…」

ちらりとラベルを確認し…って、

「じゅ、じゅうろくど…」

嗚呼、食道が熱い。
ワインがどこをどのようにいつ通ったのか明確に感じられる。
5W1Hを完璧に網羅するほどに。
言わずもがなWHYは"ギルガメッシュのせいで"。

そろそろ頭がぼんやりしてきた。
最初のチューハイがまわってきたようだ。
所詮チューハイ、されどチューハイ。
空きっ腹には十分すぎるほどに響く。

ほげえ…と私が眉間に皺を寄せている間にギルガメッシュはグラスに液体を注ぐ。

「そら、これならばどうだ」

差し出されたものは…白ワイン?

「白ならば瑠衣でも飲みやすかろう。先程のものと比べたら渋みは殆ど無い」

「いや、あの、んん…私が言いたいのは、」

訴えかけようと顔を向けると、赤い瞳に射抜かれる。
有無を言わさぬ瞳。
いいから飲め、と。
ぼんやりした頭ではこの瞳の意思に逆らえる程の文句は出てこない。

「う、…いただきます…」

「それでよい」


そんな(いつもとなんら変わりの無い)やり取りが何度も行われ、ワインだけでなく日本酒焼酎ウイスキーその他諸々飲まされた。
普段の私ならば、流石に断っていただろう。
アルコールのせいでどんどん思考回路が鈍く薄くなった私は、されるがままに流されていった。


**


「…む?」

あれやこれやと様々な酒を勧め、いつの間にか瑠衣は眠りに落ちていたらしい。
これほどに弱いとは流石のギルガメッシュにも予想が付かなかった。
いや、ギルガメッシュだからこそ予想が付かなかった。
一般人からしてみれば、アルコールに弱くはない人間でも潰れる飲酒量であったことを彼は知らない。
なんせギルガメッシュの酒盛りの相手はザルばかりだったのだから。

「…なんとも脆弱な生き物か」

憐れみとも慈しみともとれる声色で呟き、横たわる瑠衣の髪をそっと梳いた。


**

「…う、うぷっ…」

気がつけば朝だった。
尋常じゃない頭痛、吐き気、喉の乾き、その他諸々。
起き抜けのぼんやりとした視界に飛び込んで来たのは数えることすら億劫になるほどの酒、酒、酒、酒。
あと酒。
そして酒。
…それと横の金髪。

昨晩何が起こっていたのか、容易に想像がつく。
おおかた横の耀かしい金髪に流され呑まされ、ちゃんぽんを窮めたのだろう。
状況証拠がすべてを語っている。

「こンの暴君め…うっ、」

悪態をつく暇もなく、胃からせり上がる酸性物。
やばい、このままではゲロインの名を欲しいがままにしてしまう。
それだけはなんとしてでも避けたい。
主にあのクソ神父にだけは知られたくない。
勘弁してくれ。

覚束ない足取りで、しかし出来る限りの早さで私は洗面所へ逃げ出した。


その日がどんな一日となったのかは語るまでもない。
…語るまい。



6/26
ちゃんぽんダメ、絶対。
※主人公も管理人も成人済です、あしからず。


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