「ロイヤルストレートフラッシュ」
「「はぁあああ???!!!」」
高らかな宣言に次ぎ、部屋に響き渡る二つの嘆き。
現在冬木教会言峰ルームにて小さな遊戯が行われていた。
先の宣言から推測できる者は多いだろう。
そう、ポーカーである。
遡ること数時間前。
「暇そうだな瑠衣、いや…貴様が暇であろうとなかろうと我が暇なのだ、付き合え」
「重いですよギルさんや」
ソファで料理雑誌を読んでいた筈が、雑誌が取り上げられ視界に入るのは鮮やかな赤い瞳。
その金髪の青年はまるで猫のように私の上に乗りかかってきたのだ。
いつものごとく、私のことはお構いなしに。
少しは構ってくださいよ遊ぶ方ではなく都合の方を。
「狗も付き合え」
「ハァ?俺今から港に行きてえんだけど」
「構わん。付き合え」
「俺が構うわ」
私と全く同じ感想を口に、じゃあな、とランサーは部屋から出ていこうとした。
しかし、ギルガメッシュは獲物を安々と見逃す王ではない。
「付き合え」
ジャラジャラと金属音が連続したと思えば、天の鎖で捉えられたランサーの簀巻が出来上がっていた。
「ほんっと有無を言わせねえなお前」
「王たる我の遊興に混ざる事が出来るのだ。光栄に思え」
ギルガメッシュは高らかに笑いながら、なんでもバビロンからトランプとチップを取り出す。
チップは一人あたり500ptずつ配分された。あとついでにワインも。
「ねえギル…さすがに昼間からお酒…は、まあ大丈夫としても流石にココで賭け事はまずいんじゃないかな」
仮にも聖職者の言峰が知ったら小言を延々とこぼすに違いない。
神の家でそのような云々〜…考えただけで頭が痛くなる。
言っていることが正論なだけに、だ。
「ぬ?言峰の事ならば気にすることはあるまい。我の決定したことだ、問題ない」
何が問題ないのかよくわからないが、ここは従うしか無さそうだ。
ギルガメッシュがこの状態に入ると、何を言っても聞かなくなるのだ。
そんなこんなで、小さなポーカー大会が幕を開けたのだった。
そして現在に至る。
よく考えて見ればこの王、幸運Aに加えて黄金律持ちである。
「毎回5枚全部棄ててるってのに必ず上位の役揃えるとかないわー、フラッシュ」
「ないわー…私もいい線行ってたってのになあ、フルハウス」
「はっはっは好いぞ、全ての財宝は我の元にあるべきだ」
チャリチャリと音を立ててギルガメッシュの元へチップが集められる。
こちらが勝てるわけが無い。あちらは負けるつもりも予定もない。
全てはギルガメッシュの掌の上だった。
「ギルに魔力供給してるんだから少しぐらいご利益あっていいはずなのにさぁ…」
10とAでのフルハウスが成立して流石に勝てるだろうと全賭けしたのに、だ。
結果はこの通り、素寒貧である。
ちなみにランサーは途中で降りた為残チップ有り(極僅)。
「賭けるものありませーん無理でーす」
「出来レースだろこんなの」
二人で文句を垂れる。
いやだって無理でしょアレ相手じゃ。
「ふむ…我が最優であるのは世の理として、瑠衣が狗に負けるとはな」
「酷い言い様だなおい」
幸運Eとてランサーも英霊だ。
それなりの運は持ち合わせているだろう。
しかし最下位なのは少々悔しいものがある。
だって人間だもの。負けたら悔しい。
「狗を虐める事が出来ないのは幾ばか残念だが…瑠衣で遊ぶのも愉しそうだ」
「へ?」
突然告げられた物騒な言葉に情けのない声が漏れた。
「何を間抜けた面をしている、勝者へ尽くすのが敗者の運命であろう?よもや貴様、何のリスクも負わずにこのゲームに興じたわけではあるまいな?」
そのまさかである。
賭けられるような物も無ければ事前のルール説明も無かったのだから。
「さて…それでは第二部だ、瑠衣の部屋へゆくぞ」
「へ?は?え??ちょっと待ってまさか」
整った顔に悪魔が宿った気がした。
気のせいじゃないかもしれないが、何にせよ嫌な予感。
「私に乱暴する気でしょう!!!エロ同人みたいに!!!エロ同人みたいに!!!」
「そう乱暴にはせんよ、しかと丁寧に丁寧に愛でてやろうではないか」
「うわあんギルのけだものーーー!!!!」
その夜、帰還した言峰に散らかったチップを発見され、三人まとめて叱られてしまった。
更に言い出しっぺであるギルガメッシュは追加のお説教を喰らっていたのだった。
4/8
我様最強。
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