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※甘くないです





眩しかった。
ただただ、あの笑顔が眩しかった。
その裏の嫌悪に気がついていなかったのか、と言われれば嘘になるだろう。

本当は気がついていたんだ、彼の表の顔の裏側に。

オベロン・ヴォーティガーン。

彼の本当の顔。
いや、これでもまだ本当の顔は見せてはくれないのだろう。
悪意を隠さずに話してくれるようになったものの、悪態が尽きることはない。
まだまだ、隠された感情は沢山あるのだろう。きっと。

彼の言葉はすべてが嘘になる。
そんな残酷な呪いを受けて生まれた彼は、いったいどれほど孤独なのだろうか。
全を良しとせず、一すらも良しとしない。
もちろん、私のことも良しとしない。当たり前だろう。
世界のすべてが気持ち悪いと思うのだから。
そう、彼自身も彼自身を良しとしない。
それでもめげずに今日もなんとなしに話しかけてみる。

「ねえオベロン」

「何?今メロン食べるのに忙しいんだけど。放っておいてくれないかなぁ」

「つれないなぁ……」

現実は甘くない。
一蹴されておわり。

別段話題があるわけでもないが、オベロンと話したいのだ。
そんな薄っぺらい動機にオベロンが乗るはずもなく、ただただ沈黙が流れる。

人が少なくなった深夜のカルデアキッチン。
オベロンはそこでメロンを怠惰な顔つきで貪っている。
煤のような髪色に、くすんだ碧眼、白い肌。
ヴォーティガーンと成る前とは対象的に、黒くて、攻撃的なフォルムに変化したオベロン。
だからなんだという事もないのだけれど。
ヴォーティガーンと成ってからは言葉が荒くなって心の中が幾分かわかりやすくなったものの、それでもまだわかりにくいところが沢山あるのだ。

悲しいかな、悔しいことに私はこのどうしようもないロクデナシに恋をしてしまった。
オベロンはそんな私を知ったら気持ち悪いと思うんだろうな、と思ったから何も私から伝えることはしていない。
まあそれも妖精眼でお見通しなんだろうけど。

「……あのさあ。その視線やめてくれないかな、メロンに集中できないんだよ。メロンに失礼だとは思わないのかい?」

「あ、いや、そのー……ごめん」

「ハッ」

鼻で笑われた。このザマである。


それからしばらくして。
私とオベロンしかいなくなったカルデアキッチンは無言を貫いていた。
だって気まずいじゃん。いくら好きだと言っても嫌悪する相手から好きに思われても気持ち悪いだけじゃないか。
私だってそれくらいはわかる。

でもね、恋は理不尽なものなんだよ、オベロン。

無言でメロンを食べるオベロンを眺めて早何分だろうか。
わからないけれど、

「ごちそうさま。後片付けヨロシク」

「えっ、あっ、ちょ、自分で食べたものくらい片付け──」

ハッとテーブルの上を見れば、一切れのメロンがお皿の上に鎮座していた。

これは…後片付け……?

まあいいか。
残った一切れを口に放り込む。

「…………あっま……」

じくじくと痛む恋心に、メロンの甘みが沁みたのだった。


*

「はぁぁ……面倒なマスターを持ってしまったな俺も」

バサバサとマントを翻してはカルデアの中を行き来する。
神埼の目を見れば全部わかる。
俺にとっては気持ち悪い事も。
だけどそれを知ってもなお辞められない事も。
淡い恋心なんて、蹴り飛ばしてしまいたい。
今の俺にはいらないもの。
なのにどうしてだろうか。
どこか、何かが胸に引っかかる。

この心の違和感がわかるのはまだまだ先のお話である──


08/24
第3再臨オベロンが好きすぎる


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