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突然だけど、パフェを食べることにした。

理由は特にないけれど、なんとなく、甘いものが食べたくて。
せっかくだからロマニも誘う事にした。
どうせロマニを誘うのなら、パフェでも少し和テイストなものがいいのだろうかと、キャットに相談してみると

『キャットにお任せだワン!お届けはマイルームでよろしかったかご主人?』

とのことで。
今、マイルームでロマニとぼんやりパフェの到着を待っているのだった。

マスター神埼、緊張の一時である。

別にキャットの腕が心配なわけではない。
むしろ信頼している。
あのパッションリップのバレンタインに助力したツワモノだ。
彼女ならやってくれる。

では、何故緊張しているのかというと。

「えっとぉ…へへ……」

──思っていたよりもパフェの到着が遅く、ロマニとの会話のタネが尽きてしまったのである。
お互い、好き合っている仲で、別段気まずくなるような間柄ではないのだが、好き合っている仲だからこそ、緊張してしまうというか。
いつキャットが来るかわからないので下手に手を出してしまってもまずいというか。

どうやらそれはロマニも同じようで。

「あはは…中々来ないね…」

「そっ、そうだね……」

この様である。

関係が進んだ仲であるからこそ、緊張する事だってある。
先述の通り、"そういう雰囲気"になってしまうと後々大変なのだ。

そっと、そーっと。
視線を逸しているロマニの手へ、自分の手を重ねようとしたその時。

「ご主人ーー!ほうじ茶パフェ、宅配キャットお届けに……おや?キャットは邪魔だったかナ?お邪魔したワーン!」

テーブルの上にそっとパフェを載せたキャットは疾風の如く、マイルームを去った。

「「…………」」

(空気を読む力があるのならノックぐらいしてキャット……!!)

そうは思うものの相手はバーサーカー。
勘は鋭くとも到らぬ点も多くある。
致し方ないとはいえ…とはいえ……。

大変、気まずい。

下手に気を遣われてしまったがために、下手に気まずい空気が流れてしまう。
ああ、どうしよう。

「神埼ちゃん、」

「ひ、ひゃいっ?!」

裏返る声。

「ほら、そのー…届いたし、食べよっか?」

「あ、うん……そうだね、食べる…」

どこかぎこちない手付きで、ロマニがパフェのアイスをすくい取る。
私はそれをただ、眺めるだけで。

「…………」

そっと、目の前に差し出されるスプーン。

「は、はい……あーん…」

普段はこんな事しないのに!!
思わず心のなかでそう叫んでしまう。
気まずさからテンパっているのか。
私にスプーンを差し出す張本人の顔は紅く火照っていて、端的に言えば照れまくっている。
照れるくらいならしなくていいのに…そう思いつつも、その行為が嬉しくて。
スプーンにぱくりとかぶりつく。

ここまでの間、数秒。

「んんー、……ん!」

最初は緊張していて味もよくわからなかったのだが、少しして味がわかるようになってくる。
舌の上で香ばしいほうじ茶の香りがふわりと広がっていく。
舌から鼻へ、香ばしさが抜けていくのがたまらなく心地よい。
また、甘いのだが甘すぎず、とても上品な味わいとなっている。

「…これ、美味しい!」

「あはは、そうなんだ。じゃあボクも…」

「待って」

自分でスプーンを握るロマニを静止する。
やられっぱなしでは気が済まない。

「……はい、あーん」

生クリームと、アイス。そして玄米フレークであろうもの。
それらをまとめてすくって、ロマニの口元へと運ぶ。

「いや、あの、神埼ちゃん、それは流石に……大の大人がね?そんな、」

「…………あーん、して」

圧力をかけて、唇にスプーンを押し付ける。
最早意地だ。
恥ずかしいのはお互い様なんだから。

「……わかった、わかったから…あー、ん」

一瞬、ん?という顔をしたロマニ。
思っていた味と少し違ったのだろうか。
しかし不思議そうな顔をしていたのも束の間。
次の瞬間には笑顔が広がっていた。

「凄い!パフェなのに和スイーツの味なんだ!ほうじ茶?だっけ……すごく、香ばしくて…それで……」

一気に語りだすロマニ。
なんだかその姿が子供のようで、思わず笑ってしまう。

「あははっ、そんなに良かったならもう一口どうぞ?」

「謹んで 」

口元へスプーンを運べば、抵抗なく開かれる唇。

ああ、もっと、満たしたい。
その口も、心も。

その日は結局、私の気が済むまでロマニにパフェを食べさせ続ける事になったのだった。


08/24
パフェとは対象的に甘ったるい二人


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