「ギルって、肌綺麗だよなぁ…」
「見縊るでないぞ瑠衣。我はいつ何時でも完璧だ」
テーブルに突っ伏しながら私がぼやいた言葉は、本人の耳に届いていたようだ。
普段スキンケアを行っている素振も見せないのに、ギルときたらいつでも肌の調子が完璧なのだ。
乙女としては羨ましい限りである。
「随分と気にする様だな?良い、触れる事を赦す」
「どうもありがとうございます」
別に希望もしていないのだが、折角許可を頂いたので触らせてもらうことにした。
…無下にしたら怒られそうだし。
そっとギルの頬に手を伸ばす。
触れた肌は最上級の絹か、はたまた陶磁器のように滑らかで繊細だった。
傷ひとつない、透き通るような肌の色。
少し薄めの唇も、ほんのり柔らかそうに色付いている。
世間の女子が求める理想全てを持ち揃えた、まさに完璧と言える肌だった。
「はぁ……きれー…」
思わずため息が漏れる。
この手を離したくない程に心地好い肌触り。
その美しさに見惚れていると、急に腕を引かれ体勢を崩してしまった。
オンザ英雄王。なう。
「もっと近くで見ても構わないのだぞ。瑠衣に触れられるのは、存外心地が好い」
顔が近い。
肌の美しさもさることながら、他のパーツも文句のつけようが無い。
宝石のように耀く鮮烈な紅い瞳。
艶のある滑らかな金糸。
あまりにも整い過ぎた顔立ちの男と関係を持っている(といっても魔力供給ではあるが)ことに疑いすら覚えた。
「瑠衣、」
「ん?」
頬に添えられた手。唇に柔らかな感触。
それは、いつになく優しいキスだった。
「んぅ…」
まるで、触れ合うことを目的としたかのような、ギルらしくないキス。
口を開くよう催促されたので少しだけ隙間を作れば、生暖かいものに唾液を絡め取られる。
仕上げとばかりに唇を食まれ、融けてしまいそうな甘いキスは終わった。
「なに、供給ついでに褒美だ。貴様の触り心地もそう悪くはない。誇りを持て」
どさくさ紛れに魔力を持っていかれたものの、それこそご褒美と言えるようなキスをされた挙げ句褒められるなんて。
こんなに温かい気持ちになったのは久しぶりだった。
「…褒めても何も出ないよ」
「礼は要らぬ。が、そこまで奉仕したいと云うのであれば付き合ってやらなくもないぞ?」
何やら言葉が歪んで伝わってしまったようだ。
下手に照れ隠しをするのはやめておくべきだったか。
王は私の気持ちがわからぬか。わからぬな。
「王に対しそのような…無礼者め」
「えっ?言葉に出てた?!」
「顔に書いてあるぞ。我に隠し事は出来ぬと言った筈だが?」
いつそんなことを言っていたのだろうか。
しかしバレた。またバレた。またこのパターンか。
「まあよい、後に魔力を貰うだけのことだ。それで赦すとしよう」
「承知しましたよー」
まさかのお咎め無し。
それならば今のうちに甘えておこう、とギルへそっと寄り掛かる。
たまには優しい王様も悪くないな、等と考えながら私は甘く優しい空気の中で、眠りに落ちた。
Melty Kiss
3/20
砂糖大盛り。
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