「あっ」
今日も疲れた、と風呂場の扉を開けた先に見えたもの。
「ん?」
「あ……あ…………」
それは、金髪にルビーの瞳をした少年だった。
「しっ、失礼しましたぁああ??!!」
予想外の光景に驚き動転し、踵を返してドアを閉めようとする。
が、何故かそれは叶わなかった。
「別に逃げる事もないと思いますよ?」
いつの間に上がったのか、ギルが──今回は小さい方だ──、私の腕を優しく掴んでいた。
「だだ、だって、は、…恥ずかしいじゃん……??」
「……??何故です?身体を晒す事は恥ずかしい事じゃないですよ、ほら、僕は一向に構いませんよ」
そう言いながらぱっと手を離し、小さくも整った細く美しい体躯を見せてくるギル。
しかし私はそうもいかず、反射的に顔を覆ってしまった。
「私が構うのー!!」
「えー……」
彼は不満げな声を上げて、一思考する。
ほんの少ししてから、ああ、と納得がいったようにその紅い瞳を閉じながらこう告げた。
「瑠衣さん……もしかして、僕にやましい気持ちでもあるんですか?…なんて」
「!!!、そん、いや、えっと、……えーっと、」
やましい気持ちなんて!
決してやましい事なんて、ない、筈なのだけど。
どこか否定しきれず答えを返すことができない。
好意を寄せているのだから、ノーとは返すことはできない。
できない……、が。
いや待った。
「やっ、やましいもなにも!知ってるでしょ私の気持ち!!!ギルの事……」
「ええ、知ってますよ?僕の事、好きなんですよね。僕も好きですよ、瑠衣さんのこと」
まっすぐに、透き通った瞳を細めながら見つめ、朗らかに愛を囁く。
「それとは別に、です。……僕の身体見たり、瑠衣さんが僕に見られたりすると都合が悪くなっちゃったり、するんですか?」
どくん。
「閨でもなくただの入浴なのに?それでも…ですか?子供の身体をした、年下の僕に…やましい気持ちを抱いてしまう、とか?」
どくん。
「ねえ、こたえてください」
するり、と小さく細い指で頬を撫ぜられる。
優しく、心を絡め取るかのような色を孕んだ声で、そっと詰られる。
やめて、こんな所で…。
どうしようもなくて、頭を振ろうとしたその時に。
「嫌、ですか?」
だなんて、退路を断ってしまうのがこの少年なのだ。
そう言われてしまえば最早否定する事もできず、為すがまま。
「…わかりました。嫌じゃないのなら、僕の手を。ほら。どうぞ握ってください」
心の熱に浮かされ熱くなった私の手に、湯船で温まった小さな手が重なる。
どうしようもなくて、そうするしかなくて、やっぱりどうしても、
その手のひらを、私はきゅっと控えめに握りしめた。
Next→Under
09/19
ましまろ様リクエスト、子ギルでおまかせ。
やっぱり子ギルに詰られました。
back