×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



あの後、引き継ぎ仮契約は無事終えることができた。
カレンの体調も、一時不安定になったものの今現在は全く問題無い。
嫌味も絶賛稼働中である。

そうして事務的な手続きや荷造りを済ませ、言峰はそそくさと冬木を後にした。
一応見送りをしたのだがその際に、

『精々無様に足掻き喘ぎ苦しむのだな』

等、非常に非情なありがたい一言を頂いた。
あのクソ神父め。


そして今現在に至る。
時間としては大体22時。

話すことも特に無く、時間も時間なので割り当てられた部屋へと移動しようと席を立つ。
立ったのだが、ふとカレンに呼び止められた。

「…神崎瑠衣、明日以降…ダニ神父が帰るまでは決して夜に出歩かないこと。これは忠告ではありません。警告です」

それじゃおやすみなさい、と残し、カレンは自室へと消えていった。

一体、どういうことなのだろうか。
確かに夜の一人歩きは危ないが、警告されるようなことでも無いのだろうに。
まあ、今気にしても仕方のない事だ。
一先ず私も部屋に戻るとしよう。




「よう瑠衣、もう寝るのか?」

「……」

扉を開け、部屋を覗いてみたら青いのが私のベッドに横たわっている。
あの、ランサーが私の部屋にいるのは何故でしょうか。

「カレンは言峰の自室で寝泊まりは嫌だ、金ぴかと同室も嫌だー、なんて抜かしやがるから消去法として俺はここで暮らせとさ。それに、今の俺のマスターは瑠衣だしよ、問題ないだろ?」

「…あー…」

理屈はわかった。
まあ、仮とはいえマスターとサーヴァントの関係なのだ。
別におかしくはない。
至って普通の事だろう。
まあ、今までに何回か同衾していたのだし今更気にすることでもない、ような、ある、ような…

「ま、そういうことだからこれからもよろしく頼むぜ、可愛いマスターさん?」

「かっ、かわ…っ?!」

「おっ?照れてんのか?」

「うるさい!冗談は…っ」

冗談であってもそういうことを言われたら流石に動揺する。
忘れがちなのだがランサーはとんでもない美形でスタイルもいい、気前も良く男前なのだ。
女グセは悪いが。
しかしそれを差し引いたとしても照れるなという方が無茶だろう。

第一、これから一緒に寝るのにそんなことを言われたら、変に意識してしまうだろうというのに…!
って、あれ?

「…ランサー、どこで寝るつもりなの」

「あ?もちろんここに決まってんだろ」

ぽんぽんとベッドを叩く。
やっぱりか、やっぱりそうなりますか。
そりゃあそうですよね、聞くまでもありませんね。

「…嫌か?」

「いっ、嫌では…無いけど…」

「そうと決まればさっさと寝ようぜ、よっ、と」

「うわっ?!」

ひょいと担ぎ上げられベッドに寝かされる。
次いでランサーはシャツを脱ぎ捨てベッドに潜り込む。

「ちと狭いな…ま、その方が効率もいいか」

「えっ、なんで脱…っ!!…あ」

ああ、そうだ、触れ合うことでより効率の良い魔力供給が可能となるのか。
このところその必要も無いほどに平和だったものだからすっかり忘れていた。

しかし久しぶりとは云えど、一体どうしたというのか。
ランサーではなく私が。
これではまるでウブな少女の様ではないか。
一応成人もしてるしそれなりの某は通ってきた筈だしこうすることも初めてでは無いのに…!
何故か身体も熱いし鼓動が早まって仕方がない。

「…瑠衣、そう緊張するな。俺も同意無しに手ェ出したりしないからよ、安心してくれや」

「…わかった」

いや実のところ何もわかってはいないんですけどもね。
頭をわしわしと撫でられ、優しく抱きしめられる。

「おやすみ、マスター」

「…おやすみ、ランサー」


鎮まれ、私の鼓動。
鎮まれ、私の少女的な乙女心。
戻ってこい、普段の気丈な私…!

嗚呼、言峰が戻るまで私の心臓は持ってくれるだろうか…



─夜は更けてゆく。
時計の針が12を指したとき、カチリ、と何かがはまる/ずれる音がした。

その"何か"に気付いた者は、銀の少女、ただ一人だった。



6/17
予期せぬ乙女モードに戸惑う。

back






-雨夜鳥は何の夢を見る-