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初めて見たとき抱いた印象は、なんとひ弱なそして奇麗事ばかりを並べ立てる世間知らずで愚かという言葉に尽くしがたいものだった。それは今も変わらない。彼女が住んでいた世界は皮肉なことに争いもなく平和と聞いたのを思い出し公瑾は口端に揶揄めいた笑みを浮かべる。 「…やはりあなたは軍師らしくないですね」 軍師たる者の意義は冷静沈着で何事にも動じず不要と思えば仲間でも即座に切り捨てる非情さが求められていて。果たしてあの優しすぎる少女に軍師が務められるのか。争いが起きたら茶色の大きな瞳を悲痛な色に染め上げ秘めている何かを出さぬように唇を血が滲み出る程、強く噛みしめて目を逸らさない姿。それ自体が公瑾にとって酷く珍しげに映った。名は確か花といったか、彼女にそこまでさせるものとは何なのだろう。考えを巡らせ公瑾は溜息を吐き出した。いくら考えても栓のないことだ、と自ずながら理解出来ている。それでも思うのだ。 「彼女の話通りそんな世界があったら今頃、争いなど起こらないでしょう」 ぽつりと呟かれた言葉は誰に向けられたのか公瑾以外知る由もない。では何故、自分はこんなに花の身を案じているのだろうか。暫し瞑目した後、公瑾は浮かんだ考えを払拭するよう手に持っている書簡に再度、目を通し始めた。 「お師匠さま、これはどうしたらいいんですかー」 軽やかな聞く者を不快にさせない声音が部屋に響く。師匠と呼ばれた青年、かの有名な赤壁の闘いでの立役者と知られる孔明は今まで目を通していた綴じ本から視線を上げた。 「次は簡単な内容にしてくれたら僕も嬉しいよ」 半ばからかい混じりのそれに対し乱雑に積み重なった竹簡へ筆を走らせながら格闘している少女、花はむっと唇を尖らせる。 「何ですかお師匠さまの意地悪!」 すぐさま反論の言葉が返ってくる状況に孔明は聞こえないようそっと溜息を吐き出した。そして承諾の言葉を紡ぐ。 「君の言い分は分かったから見てあげる。こっちにおいで」 「これなんです」 早速、孔明の執務机までぱたぱたと軽い足音を立て歩み寄ってくる花。そんな姿は年相応の少女にしか見えず孔明はくすりと笑みを零した。目の前に差し出された書簡を暫しの間、凝視して眉を顰める。たっぷりと時間が過ぎ意を決したように孔明は口を開く。 「頑張って理解しようと努力したけどこの字は流石の僕でも解読不可能だ」 さらりと告げられた聞き捨てならない言葉に笑顔だった花の表情が凍りつく。次いで顔色がみるみるうちに赤くなっていき孔明が言い過ぎた、と後悔するも時既に遅し。頬を膨らませこちらをきっと睨みつけてくる横顔。 「…もういいです」 拗ねたのだろう微かに口を尖らせて俯く彼女の頭からぴょこんと跳ね出ているつむじへ孔明は視線を遣り口を開いた。 「まあ読めなくはないし要は内容だから大丈夫だよ」 半ば苦し紛れの擁護に花は俯かせていた顔を勢いよく上げ瞳を輝かせる。 「本当ですか?!」 都督と軍師が愛しい最近です! 孟徳さんも書けたら書きたいなと思っているので頑張ります。 しかし乙女ゲーム嵌ってから予想もしなかっただろうキャラに転がりまくってます^q^ 土方さんレイン円晴明孟徳公瑾 などばくしょ 晴明さまは予想通りでしたがまさかの道満さんも好きになるっていうね。 ほんと予想つかないです。 |