一度だけ | ナノ
月子先輩達と別れて教室に向かって爆走中。

なぜならクラスの皆から預かった昼休み提出の課題プリントを机の上におきっぱだったから。私、優しい!!

階段を駆け上がり曲がり角を右に曲がった時どんっ、と右肩に鈍い衝撃。
衝撃に耐え切れずにあたしの体は重力に従って落ちていく。

あ、落ちる。頭の片隅でそんな言葉が。

来るであろう二度目の衝撃に備えて目を硬くつむる。

「っ〜〜〜…危ねーな…」
『…あ、』

偶然階段の下を通りかかった人に支えられていた。
周りにプリントが散らばった。

見上げると銀色の髪の毛が目に入った。誰だっけ。この特徴的な前髪。

「悪ぃ天音!怪我ないか!?」

階段を駆け下りてきたのは犬飼先輩だった。
同じ神話科なので顔なじみ程度ではある。

『あ…はい、だいじょーぶです』
「ほんっと悪かった!!」
『ほんと大丈夫ですよ!』
「ま、どっちもどっちだな」

いきなりの介入者。
よっこいしょ、という感じで起こしてもらう。

やっぱ改めて見てもこの人誰だっけ。七海先輩に似てるなあ、どことなく。
ネクタイを確認すると青色。3年生…誰だっけ?

答えは犬飼先輩がくれた

「不知火会長もすいませんでした…」
『ああ!ぬいぬい会長だ!!』

2人が何言ってんの的な目で見てくる。
うっ…顔覚えはあんまりよろしくないんですよね!そしてあだ名しか知らないから突発的に出てきたんだよね!会長ごめん。

「…ああ、まあいい。とりあえず2人とも不注意だったな、今度から気をつけろよ」
『あ、はい!すごい生徒会長みたいだ』
「みたいじゃなくて生徒会長なんだよ!馬鹿かお前!」

ばすっと後ろから犬飼先輩の鉄拳が入った。痛い。そんなにノリ突っ込みしなくても。

「って、ああ!俺ちょっと用事あるからスマン!ほんと悪かった!生徒会長も俺ここで!」

一気にまくし立てて犬飼先輩は去っていった。早いな。
って、残された私は生徒会長と何をすればいいのだろうか。あ、プリント拾わなきゃ。うん。

「お前1年の天音尚だな?」
『え?あ、はい』
「翼がお前と会いたい、って騒いでたぞ」

なにそれ翼かわいい。

『会いたいって言われても、翼が生徒会で忙しいだけですからねー』
「うん、だから」

がしっ、と手を捕まれた。は?
何コレと思って不知火会長の顔を見ると何か嫌な予感がするような笑顔で。

「お前も生徒会に入らないか」


弓道部の次は生徒会かよ!!
(今日は厄日だ…!!)(ていうか生徒会入れよ)(拒否権なし!?)(当たり前だろ)(人権の侵害だああ!!)


2012.01.21 修正・加筆
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