そうして事が起きたのはあれから、一週間程後のことだった。
お昼休み、月子先輩たちと一緒に中庭でお昼を食べていると哉太先輩が箸を止めて訝しそうに私の後ろを見つめた。
「哉太?どうかしたのか?」
「いや、あの女の人…こっちに向かって来てる気が…」
誰それ、と私が振り返ると。
うそ、なんで…?
それは母さんだった。(今は母さんと呼ぶことが果たして良いのかは分からないけれど)
私の前に立った母さんはいきなり右手を振り上げて私の左頬に平手で一発。
あまりの衝撃に私は叩かれた方に勢いよく顔が向いた。
『った…!』
「!?いきなりなにするんですか!!」
月子先輩が私を庇うように抱き締める。
そして哉太先輩がてめえと掴みかかろうとしたのを錫也先輩が私の母だということを伝えて宥める。
「あんたが、」
呻くような掠れた低い声が私の耳に届く。
「余計なことばかり…っ!」
『っ…』
「私には都月さえ居れば良いのになんでなの…!?
なんで、都月もあの人もあんたのことばっかり…っ!」
「かあさ、」
落ち着いて。
そう続けようとした言葉は母さんのあんたが呼ばないで!!という叫びに塞がれた。
じゃあなんて、よべばいい?
強い力で両肩を掴まれているはずなのに、痛みも何処かへ飛んでいって私は呆然とその映像を眺めていた。
テレビ越しな光景
こんなドラマ、誰が楽しいっていうの?