一度だけ | ナノ
ああ、私の前の土萌先輩の視線が痛い。

がしかし、その視線以上に…

『うま、』
「美味いって…女の子は美味しいって言った方がいいかな。でもありがとう」

東月先輩が優しくかつ苦笑いで諭す。いやでもこれはうま…おいしい。
うわなにこれ、男が作るもんじゃないよ。

『おにぎり頂きます、』

綺麗な三角のおにぎりに手を伸ばす。
私の行動が目に入ったのか七海先輩が若干遅めの忠告を入れてきた。

「あ、気をつけろよ。錫也のおにぎりはロシアン・ルーレットみたいだからな」
『七海先輩忠告遅い』

もう食べてます。
一度口に入れたものを吐き出すのも悪いのでゆっくり咀嚼すると、口の中に広がる甘いもの。これって、

『…チョコレート?』
「うわ出たよ!!それハズレだ」
「もう錫也ってば!」
「ははっ、ごめんなー羊も美味しいって言ってたからさ、もう一回入れてみたんだけど」
『…美味しい』

尚の発言に3人が目を丸くした。

『なにこれ、案外チョコと米って合うんですね。びっくり』
「錫也!やっぱりチョコレートのおにぎりは美味しいんだよ」

土萌先輩がいきなりそんな事言い出した。
…あれ?気のせいかな。アホ毛がぴょんぴょん跳ねてる。

『土萌先輩もこれ好きなんですか』
「うん。僕、天音と仲良くなれそうな気がする」
『そんな気がしなくもないです』
「僕の事は羊って呼んでいいよ」
『じゃ、羊先輩って呼びます。私の事は尚でいいですよー』

「…天音って味覚おかしいのか?」
「…尚ちゃんが美味しいんだからいいんじゃないかな」
「二人が美味しいって言うんだからもう一回作ってこようかな」
「『ほんと!?』」

おにぎりinチョコレートで意気投合
(…天音ってよく分かんねえ)(尚ちゃん可愛いっ)(今度ジャムでも入れてみるか)(やめろ錫也。俺達を殺す気か)


2012.01.21 修正・加筆
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