この学園に来てから、なんだか泣き虫になっちゃったなあ。
そんなことを頭の片隅で思いながらまた涙を流した。
錫也先輩は何も言わずぽんぽんっと背中を叩いてくれている。
それがどうにも居心地がよかった。
side Suzuya
『すー…』
泣き疲れてしまったのか俺の腕のなかで寝息をたてる尚。
両手で俺の制服を弱々しく掴んでいる。
寮に帰さなければと思うけれど、さすがに起こすのもかわいそうだ。
仕方ないなあ…、と思いながら自分の思った以上に軽いその体を抱き上げた。
職員寮(兼女子寮)の寮監さんに話を通して尚の部屋の鍵を借りる。
勝手に入るのもなー…と罪悪感も少し感じながら尚の部屋に足を踏み入れた。
ベッドに寝かせとけば良いかな、と思い尚をゆっくりベッドの上に降ろす。
「え、」
『すー…』
降ろした、と思っていどこうとしたのだけれど…両手がぎゅうっと俺の制服を握ったまま。
腕だけびろーんと伸びている。
おいおい、これは…俺は、どうすれば…。
『ん、…ずや、せんぱ…い』
寝ぼけているんだろう。俺を見てふにゃりと力なく笑って手をぱたりと落とした。
「………」
う、わ。
手が離れたのを良いことに俺はダッシュで尚の部屋を出た。
尚の部屋の鍵を寮監さんに返しに行き職員寮を出たらばったり陽日先生に出くわした。
「おう東月!どうした?顔真っ赤だぞ」
「…」
天然というかなんというか。
いつもの無邪気な笑顔でそう爆弾を落とした陽日先生。
俺はきっといま間違いなく間抜けな顔に違いない。
爆弾投下
(だって、まさか、)(…なあ?)