来ちゃった、じゃないんだけど!?
ははっ、と笑う都月くんにイラッとしたのは否めない。
「なあこの人たちは?」
マイペースな都月くん。マイペース過ぎる。なんだこの自由人。
『…左から土萌羊先輩、夜久月子先輩、七海哉太先輩、東月錫也先輩だよ』
「いつも尚がお世話になってます。
尚の従兄弟の天音都月です」
本当は従兄弟なんかじゃないんです。
本当は実の兄なんです、なんて口が裂けても言えない。
顔に出そうになった表情を隠し都月くんに尋ねた。
『一人で来たの?』
「ん?うん。バスで来たよ」
特に気にした様子もなくさらーっと言う都月くん。
っとに、この馬鹿は…!
『また倒れたらどうすんの!…叔母さんたちが心配するでしょ!』
「良いんだよ。たまには俺だって息抜きしたいのー」
のー、じゃないでしょうがこの馬鹿ちんが!可愛くないわ!
しかし来てしまったものはもう仕方がない。
『無理しちゃ駄目だかんね!』
「分かってるって。なあ、星月学園の外なら見学してきても良いの?」
『それは良いと思うけど…』
「じゃ俺そのへんぶらぶらしてるからなー」
そう言ってまた来た道を逆戻りし始めた。
『あ、…っちょっ、迷子にならないでね!?』
「お前は俺の母さんなのか」
茶化したように笑いながら都月くんは人混みのなかに消えていった。
ああ…心配だあ…。不安げに消えていった人混みを眺めた。
『すいません、いきなり』
「気にしなくて良いよー?でも、従兄弟さん尚ちゃんと笑った顔が似てるね」
「あ、それ僕も思った」
「なんか口元が似てる気がしねえ?」
よく言われたなあ、それ昔は。
今は兄妹という事実でさえ隠されている。
両親も親戚も近所の人でさえも私を腫れ物のように扱う。余計自分の持っている傷の深さを一々自覚させられることこの上ない。
『…よく、言われます』
それでも私は笑うけれど
(笑うんじゃない)(笑わなければならないの)