一度だけ | ナノ
『ま、負けた…!』

宮地先輩の馬鹿ああ!と叫ぶと、

「お前が手加減すると泣くって言ったんだろうが!
負けても泣くんなら俺はどうすれば良いんだ!」
『何で今日に限っていつものジャージ持ってきてないのさ直ちゃんせんせー!!』
「俺のせいなのか!?」

私のお題は"黒のジャージ"だった。
こりゃもう貰ったもんだね!と笑顔で天文科テントを振り返ると
今日に限って直獅先生は白地に黒ライン入りという星月学園のジャージもどきを着ていたのだ。今日に限って(大事なことだから二回言いました)。

他の黒ジャージを探している間に宮地先輩が見事にゴールインと。
かくして錫也先輩のご褒美ゼリーはなくなってしまったというわけであります。

『どうせ生徒と一体感出すにはこれだろ!とか思ったんでしょ!』
「ぎくっ!」
『古い!』

古いわ!ぎゃふん!だとかぎくっ!とか。
直ちゃんせんせーや宮地先輩とぎゃいぎゃい言い合っていると肩をぽんぽんと叩かれた。

振り返ると錫也先輩だった。

「お疲れ様、残念だったな」
『錫也先輩、ゼリーは…!』
「頑張りました、ってことでご褒美」

お弁当の準備はもうしてるから、と微笑んだ錫也先輩は神様仏様錫也様だ。錫也先輩の後ろに後光が見えた。
間違いなく気のせいじゃない。

『お母さん大好き!』
「…微妙に喜べないなあ、それ」

それじゃあ行こうか、と歩き出した錫也先輩の後ろをついていった。



「おーっすお疲れ」
「遅いよ尚!僕もうお腹減って死にそうなんだけど」
「尚ちゃんお疲れ様!」
「はい尚、おしぼり」

錫也先輩に手渡されたおしぼりを受け取って空いていたスペースに座る。
前にはおせち並みに豪華な弁当in重箱があった。相変わらず美味しそうだうん!


『むまーい!』
「おい尚、それ俺のだろ!」
『ふふん!名前でも書いてるんですか?』
「羊が増えた!うぜえ!」

哉太先輩の皿の上に乗っていたからあげをそろーっと奪って口に入れた。だが見られていたらしい。
いや人が食べてるのって美味しそうに見えるよね、って話。

「こらそこー、喧嘩しない」
『ごめんなさい』
「なんだこの俺と錫也の差はよ…!!」
「ところで午後の競技の一番最初はなんだっけ?」

哉太先輩を華麗にスルーした羊先輩。

「えーっと、…あ、200メートルだ」
『あー…、私出るんですよねえ…。やだなあ…』
「私もだよー?頑張ろうね、尚ちゃん!」

月子先輩の笑顔と両手でガッツポーズにきゅんきゅんしながらはい、と答えた。
そして錫也先輩の美味しいお弁当を頬張っていると、

「尚ちゃん」
『え…、』

この場で聞こえるはずのない声が私の名前を呼ぶ。
嘘でしょう、と思いながら振り返る。


『つ、づきくん…!?』
「吃驚した?」

私の後ろには悪戯に成功した子供のように笑う都月くんが居た。
衝撃は流星並み
(遊びに来たよー)


2012.01.23 修正・加筆
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