一度だけ | ナノ
「よーっす、お前うおっ!?」
『ちっ、外したか…』
「尚ちゃん頑張って!!」
「ちょ、てめっ月子!尚!」

部屋に一番乗りに入ってきた哉太先輩(の顔面)を狙って枕を投げると哉太先輩は紙一重で避けた。
そんで、投げた枕はドコ行った?

哉太先輩が避けて、枕は、後ろの、錫也先輩に…
恐る恐る後ろの錫也先輩を見ると、それはもう素晴らしい笑顔で、

「尚…?」
『きゃー!錫也先輩ごめんなさーい!!』
「あはは、なに怯えてるの。ほらいくぞ」

びゅっとそれは枕ですかと問いたくなるような早さで私に枕を投げ返してきた。

『にゃっ!!』

私の顔面にヒット。ばふんと既に敷いてあった布団のうえに倒れる。
い、痛い!!枕は柔らかいはずなのに痛い!!

「ちょっと、東月先輩たち入り口で…、うわあ」

く…っ、梓の顔を見なくても表情が手に取るように分かる…!!

「ぬはははっ!!尚ぶっさいくなのだー!!」
『つばさつぶす!!』

くっそ、人を笑いのタネにしやがってよ!!

と、そこから枕投げ合戦が始まったわけです。



わー…皆さん元気ー。
最初こそ元気よく枕を投げつけて(主に一樹かいちょーと翼に)スタミナ切れして壁の側で休憩中なう。

傍観組は
月子先輩に、颯斗先輩に金久保先輩に神楽坂先輩だ。

数がちょうど良いので2年vs1・3年になっている。
(といっても桜士郎先輩は枕を投げずに写真を撮っているが)

ちなみに私は無差別攻撃派だ!
錫也先輩には怖くって出来ないけど…!笑顔でプレッシャーかけてくるとかナシだよ!


エネルギー補充のため、はちみつレモンの飴を舐めていると、隣でもぞもぞと何かが動いた。
確認すると、神楽坂先輩が私の顔をじーっと見ていた。え、なんか、ついてるかな。

『あのう、神楽坂先輩?どしました?』
「……うまそうな、匂い」
『ほえ?…あ、これですかね?』

はちみつレモンの飴。要ります?と訊くと要ると答えたので飴を渡すと、

「…あんた…、良い人」
『…(この人、いつか誘拐とかされるんじゃ…)』
「………うまい」

飴を食べる姿は小動物のようできゅん。

『あ、あの神楽坂、先輩』
「………四季、で良い」
『じゃあ四季先輩』
「…尚、で…良い…?」

こくりと頷くと四季先輩はふわりと笑って(むしろ微笑みに近い)ぱたり、と倒れるように

「すー…すー…」

ね、眠ってる、だと…!?マイペースだ。

『(うわ、…四季先輩の寝顔見てたら、なんか眠くなってきた…)』

なんだ、もらい泣きならぬもらい眠りですか。

ふわあ、と大きな欠伸が出てきて、こてりと四季先輩の横に寝そべった。
睡魔はすこし後から追ってきた。



Side Suzuya

つ、疲れた…。

枕投げ集団からはぐれて壁に寄りかかる。こんなに全力で枕投げしたの初めてだ。

そして枕投げの発端の尚は………寝てるし。
少し離れたところで、神楽坂くんの横に。しかもすやすや眠っている。

近くに寄ってみると二人ですぴょすぴょ呑気に眠っている。

改めて、お礼を言おうと思ってたんだけどな。
わざわざ起こしてまで言うことじゃない。

尚の頭を撫でるとうっすら目を開いて、

「つ、づき、くん」

そう言って、尚はまた目を閉じた。尚の口から知らない男の名前がでてきた。

ただ、それだけなのに、

なにかもやりとしたもの
(錫也覚悟!)(え、あ…っいて!かーなーた!)


2012.01.22 修正・加筆
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -