一度だけ | ナノ
※原作ブレイク


『てわけで、少しの間お邪魔しまーす!』
「尚も一緒に行動するの?」

羊先輩がそう問いかけてきた。
錫也先輩と哉太先輩に目を向けると羊先輩と月子先輩を挟んで、錫也先輩と哉太先輩が居た。

『しますよー!梓と翼が弓道部と生徒会と少しだけ一緒に行くっていうから一人なんですよ!
なんかちょっと切ないから来てみました!てへ』

少しだけ嘘を織り交ぜてみる
ダメですか、と聞くと構わないよと羊先輩が答えた。

「それじゃ、5人で行こう!」
『つっこ先輩愛してる!』

抱きつくと羊先輩に首根っこをつかまれて月子先輩から引き剥がされた。

「月子に抱きつかないで」
『羊先輩は月子先輩に抱きつくくせに!』

僕はいいの、と羊先輩はしたり顔。差別だー!

「はい、錫也と哉太パス」
『ぅえ?』
「僕は月子と行くから、3人で早く追いついてよね」

行こう月子!と羊先輩は月子先輩を引っ張って走り出した。羊先輩まじ鬼。

「「…」」
『とりあえず…行きましょうか?』

そういうと辛うじて錫也先輩だけ返事してくれた。


『………喧嘩、したんですよね』

人が捌けてきたところで口を開いた。

「…してねえよ」

哉太先輩がそっぽを向いてそう言った。そんなのバレバレだ。

『してなかったらこんな気まずい雰囲気でません。居づらいことこの上ないですよ』
「居づらいならどっか行けよ…」
「おい哉太…。尚には関係のない事だから」

関係ないで近寄らせないんですか、そう言うと錫也先輩の笑顔が崩れた。

『………確かに関係ないですけどね、………喧嘩したままどっちかコロッと死んじゃったらどうするつもりですか。謝れないまま終わりなんて、………最悪じゃないですか』

気付くのは、何か大きなことが起こったときだけにしか気付かない。
そしてそれもすぐ忘れてしまう人だっているのに。

『明日があるなんて無条件に信じてどうするんですか…!!』
「っ…」
『言い合える仲じゃないですか!全部ぶつければいいのに!…2人の関係ってぶつけたら直ぐ壊れちゃうほど、そんなに脆いんですか?』

2人とも俯いてる。顔も見えない。だからら私の気の済むまで言わせて貰う。

『錫也先輩も、哉太先輩も馬鹿だ』

私は知らなかったから。私は今なら知っているから、その大事さが分かるから。

『…ちゃんと言いたいこと伝えてから喧嘩してください。すれ違ったままの喧嘩なんて間違ってる。

ましてや相手を思いやっての喧嘩とかバカップルか!なんだリア充か!?2人はイケメンだからリア充なのか!?なんだ、私に対する自慢か!!!』

そうぶちまけると哉太先輩の肩が震えだした。え、あれ!?泣き出した!?

『え、あれ!?ちょ、哉太先輩泣かないで!あれ!?言い過ぎた!?』
「ぶっ、ふはははっ!!ふはっ、くはははっ!!」
『え、あれ…爆笑…?』

ちらりと錫也先輩を伺うと、錫也先輩も口元を押さえていた。

『す、ずや先輩?』

錫也先輩の方へ耳を傾けると、

「ふ、はは…っは、」

小さく爆笑していた。え、なんで?

『な、なんで…!?』
「お、お前…っ、最後のでぶち壊し…っぶはっ」

思い出したのかまた吹き出した哉太先輩。

「ははっ、…ありがと、な。喧嘩してた俺らが馬鹿みたいだな」
「だな。尚、ありがとよ」

2人してぽんっと私の頭に手を置いた。

『仲直り、した?』
「ん?したよ。尚のおかげ」
「おーお前のおかげ」

先輩たちの笑顔を見て安心して、涙がでてきた。

『ふぇ…っ』
「え、ちょ…!ごめん!喧嘩してごめん!だからもう泣かないで?」
「お、おお俺もう行くからな!!」

泣くな、って言われるほど涙が止まらなくなって。
哉太先輩はこういうのに適してないのは分かってるから錫也先輩は去っていく哉太先輩に何も言わなかった。

『喧嘩したままだったら、どうしよう…って、』

きっと2人なら、と思っていた片隅でこのままだったら、という不安は消えなかった。

「ごめんな、もう喧嘩しないから」
『っ…ほ、んと?』
「うん、尚が泣くのなんて見たくないからな」

優しい笑顔でそう言った。まるで、赤ちゃんをあやすような感じで。
私の目線の高さに降りてきて頭に手を乗せてそう言った。

「ごめんな、心配かけて」
『っふ、ぅ…』
「よし行こう。な?」

そう言って私の頭から手を退かし、その手は今度私の右手を掴んだ。

「ほら、月子も羊も哉太も待ってるから一緒に行こう」
『っ、はい』


「…うわ、ぶっさいくな顔」

会った途端にそれはないだろ、羊先輩…。というか元からぶっさいくなのでそりゃぶっさいくにもなりますよね!

「もう羊くん!そんな事言わないの!尚ちゃんありがとうね!」
『いや、そんなお礼を言われるよーなことは…』
「してるよ。ありがとうな」

私はそのお礼になんともいえない気持ちになった。
世界の果てを知っていて
(それでも私は、)(笑うのよ)


2012.01.22 修正・加筆
title by約30の嘘
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -